北欧古物専

デンマークで椅子張り職人になりました

3 days of design 2024 その2

前回に引き続き、コペンハーゲンで開催されたインテリアのデザインイベント3 days of designのレポートです。

 

https://www.3daysofdesign.dk/

 

【Fritz Hansen】

https://www.fritzhansen.com/ja/?gad_source=1&gclid=Cj0KCQjwt4a2BhD6ARIsALgH7DrO7GfuXRZtO491YiOTc9ejOKonkuLRmEc96A1qxXr_KJRZDG4ZGLUaAtEfEALw_wcB

 

とても素敵なカフェが展示会場となっていたのは、日本でも人気のFritz Hansen。

新しく建てられたオシャレなカフェでは、展示だけではなく、イベント期間中にサンセットカクテルパーティーや飲食サービスなどもあり(招待客のみ)、たくさんの人がくつろいだ様子で楽しんでいました。

会場は新しいオペラハウスのすぐ隣でした。

曲面のぐねぐねしたガラス張りの平屋の建物の上には、植物の生えた屋根が軽やかにのっています。 有機的で背景に溶け込むような、環境に配慮されたデザインです。

外観は小ぶりな平屋のカフェなのですが、中に入ると、中央には地下に向かって吹き抜けと螺旋階段が続き、立体的で広がりのある空間となっています。

地下への階段を下りた先には、ジャングルの中に佇むように、エッグチェアが展示されていました。

その他の家具は、カフェスペースに展示されていました。 屋外にもフリッツハンセンのアウトドア家具が展示されており、みなさんくつろいだ様子で座っていました。

こちらは初めて見たフリッツハンセンの椅子です。 シドニーオペラハウスを設計したことで有名なデンマーク人のデザイナー、ヨーン・ウツソンのデザインです。

 

【Louis Poulsen】

https://www.louispoulsen.com/ja-jp/private

 

日本でも人気の照明ブランド、ルイスポールセンの展示会場にも行ってきました。

趣のあるこちらの建物全体が、オフィス兼ショールームになっています。

建物の外には、ルイスポールセンの象徴的な照明器具の一つであるアーティチョークを題材にしたオブジェが展示されていました。

なんとなくアーティチョークのエレメントが見て取れる…ような…

展示会場の中には、アイコニックな照明器具がたくさんのカラーバリエーションでずらりと並びます。

クラシックなデザインも素敵です。

こちらは無料で配布されていたポスター。 今年はアーティチョーク推しなのか、あちらこちらにアーティチョークがありました。

こちらでは、アーティチョークの組み立て作業の実演が行われていました。

写真中央の女性が肩にかけているのは、無料で配布されていたルイスポールセンのエコバッグです。 こういったイベントグッズがもらえるのも、嬉しいですね。

 

【MALTE GORMSEN MØBELSNEDKERI】

https://maltegormsen.com/

 

工房の名前にもなっているMalte Gormsenさんという木工職人さんが立ち上げた家具工房です。

私は今回の3daysofdesignで初めて知った工房です。

 

私の好きなデンマーク人デザイナー、ナナ・ディッツェルが最後にデザインしたバースツールをこちらの工房で制作していて、その制作秘話を娘のデニー・ディッツェルさんと一緒に紹介する、というイベントが開催されていたので、参加してきました。

 

https://maltegormsen.com/journal/3daysofdesign-2024/

 

ショールームの看板は、控えめでシンプルなデザイン

こちらがナナ・ディッツェル最後の作品 Flower

ナナ・ディッツェルの椅子や生活について説明する娘のデニーさん(写真中央)

少人数でゆったりとした雰囲気の中、ワイン片手にじっくりお話を聞くことができました。

 

ナナ・ディッツェルが亡くなる最期のときまで、デザイナーとしてデザイン活動を続けていたこと、いくつになっても新しい技術や素材に好奇心旺盛で、常に新しい挑戦をしていたことなど、母の生活をそばで見続けていた娘のデニーさんからお話を伺えることは、とても貴重で感動的なひと時でした。

 

プレゼンテーションの後に少し時間があったので、私は勇気をふりしぼって、デニーさんに話しかけてみました。

とても気さくな方で、一緒に2ショット写真まで撮っていただいて感激しました。

 

日本から来たこと、日本でナナ・ディッツェルさんの家具に携わる仕事をしていたこと、デンマークで椅子張り職人になったことなどをお話したら、デニーさんのお父さん(ナナ・ディッツェルの夫で家具デザイナーのヨーエン・ディッツェル)もデザイナーの学校へ行く前に椅子張り職人の学校へ通っていたことを教えてくださいました。

 

当時は、家具デザイナーになるためには事前に職人教育を終えないといけない決まりだったのですが、ヨーエンさんは左利きのために木工職人の教育を受けさせてもらえず、代わりに椅子張り職人の教育を受けたのだそうです。

 

左利きだから仕方なく椅子張り職人とは、なかなか面白いお話ですね。

 

ちなみにイベントは全てデンマーク語だったのですが(参加者がたまたま全員デンマーク人だったようです)、英語対応もしてくれるはずなので、3daysofdesignでデンマーク語のみのイベントに出会ってしまったら、英語スピーチをお願いしてみて下さいね。

 

【KOYORI】

https://www.koyori-jp.com/

 

日本から出展のKOYORIは、日本の家具を世界に広めようと奮闘している、熱い志を持った新しい家具ブランドです。

3daysofdesignには去年から参加されています。

 

提灯を使ったこちらの展示会場は、コペンハーゲンを拠点に活躍するデザインユニット、ガムフラテージのデザインです。

 

KOYORIさんのブランド名のデザイン、素敵ですね。

ガムフラテージデザインのKigoシリーズは、イサムノグチの彫刻デザインからインスピレーションを受けたのだとか。
イサムノグチの庭園美術館は私も大好きなので、勝手に親近感を抱いています。

新作のMakuriチェア

窓の外のコペンハーゲンの街並みも素敵です。

 

【The Radio House】

https://vilhelmlauritzen.com/project/radiohouse

 

こちらは3daysofdesignとは関係ないのですが、3daysofdesignの会期中にたまたま無料コンサートが開催されていたので訪れた、コペンハーゲンのラジオハウスです。

今は音楽学校として使用されていますが、元々はデンマーク国営放送の本社だった建物で、デザインはヴィルヘルム・ラウリッツェンです。

ラジオハウスの一部の家具は、当時ラウリッツェンの事務所で働いていたフィンユールと共同でデザインされたものだそうです。

 

チーク、真鍮、アニリンレザーなど、時間と共に味わい深くなる素材を使った、有機的で機能的なデザインが美しすぎて、何とも贅沢な空間でした。

ミッドセンチュリーデザインの真骨頂を見た思いです。

 

こんな素敵なコンサートホールで無料コンサートを開催するデンマーク、懐が深すぎます。

 

階段ホールは吹き抜けの両サイドが全てガラス張りになっていて、とても気持ちの良い空間になっています。

階段ホールの内側から見える外の緑が美しいですね。 内装にふんだんに使われているチークと、階段や窓枠の白とのコントラストが美しいです。

建物の入口ホールの大理石も、とても贅沢ですね。

会場に着いたら、コートや大きな荷物などを預けます。 どこも抜かりなく美しい。

 

荷物を預けて身軽になったら、感動的に美しい階段ホールへと続きます。
踊り出したい気分です。

 

 

2階席の外に少し休憩できるスペースがあるのですが、椅子や照明のデザイン、天井の曲線もまた美しいです。

コンサートホールの中もふんだんにチークが使用されていて、ガラスの照明器具も美しく、とても雰囲気があります。

 

ホール中央には、見事なパイプオルガンもありました。

座席は、なんと経年変化の激しいアニリンレザー。 公共の建物でこの素材を使うとは、建築家の素材に対する並々ならぬ熱意を感じます。

どこを見ても美しすぎて、ため息の出る素晴らしい建物でした。

コペンハーゲンに行く際には、ぜひ訪れてみてください!

 

 

今回3daysofdesignで見た会場全ては紹介しきれていませんが、特に印象に残った会場をご紹介させていただきました。

 

とても3日間ではまわり切れない規模ですが、思いがけず新しい出会いや発見があったり、普段は会うことのできないデザイナーの生の声を聴くことが出来たりと、とても充実した3日間となりました。

今回も、日本から来てくださった友人知人のみなさんとお会い出来て、そこでも新しい出会いがあり、本当に楽しかったです。

こういう人とのつながりが本当にありがたく、宝物だなと思います。