北欧古物専

デンマークで椅子張り職人の学校に通っています

現場研修(Læreplads)55 現場研修終了

冬の間ずっと暗かった朝の通勤時間がやっと明るくなってきて、とても嬉しいです。

朝工房に着くと、きれいな朝焼けが見えました。

GETAMAで働けなくなってしまったので、その後はずっとティナの工房で働いていました。

 

いろいろな椅子の張替をする中で、私が一番面白いなと思うのは、古い椅子の修理です。

特に、ウレタンフォームを使っていない時代の椅子は、例えば60年以上前の自然素材をそのまま再利用することができるので、感動します。

ウレタンフォームはとても便利で快適な座り心地ですが、ほとんどの場合は30年も経つとボロボロになってしまいます。(保存状態にもよりますが)

先日張り替えた椅子は、下地材は全部自然素材でした。

麻草や動物の毛を何層にも重ねます。

古い麻草も、ほぐせばまた何十年と使えます。

均等にならして敷き詰めます。

この椅子の下地の修理で新しく使った材料は麻のテープのみで、それ以外は全て元の材料を使っています。

 

麻のテープは年月と共に傷んで耐久性が衰えてしまうので、張替えが必要です。

新しい麻テープに張り替えました。

昔の自然素材は質が良く、何十年と長く使える素材なので、本当に優秀です。

そして、こんなにボロボロになった古い椅子でも、ちゃんと修理して何十年と使うデンマーク人の物を大切にする文化は、とても素敵だなと思います。

 

さて、私の現場研修期間はこれで無事に終了しました。

契約書上は4月1日まで研修期間があるのですが、デンマークは今週からイースター休暇に入るので、実質的には先週の金曜日が最後の研修日となりました。

 

最後の日には、ティナが近所のベーカリーから美味しい焼きたてパンを買ってきてくれて、工房で2人で、研修の終了をお祝いしました。

 

研修の3年半、ティナには本当にお世話になりました。

たくさん失敗して迷惑もたくさんかけましたが、研修中にティナに怒られたことは一度もありません。

いつだって、失敗は誰でもするもの、上達するには練習するしかない、と前向きな言葉をかけてくれて、新しいことにもたくさん挑戦させてくれました。

本当に尊敬する大好きな師匠の元を去るのはとても寂しいですが、これからも失敗にめげずに、少しずつ職人としての腕を磨いていきたいと思います。

 

4年間私のブログにお付き合いいただき、見守っていただき、ありがとうございました。

これで晴れて、デンマークで椅子張り職人になることができました。

日本には、デンマークのように椅子張職人になるための本格的な教育プログラムはないと思いますが、私の経験が、デンマークの職人教育に興味のある方のお役に少しでも立てたら嬉しく思います。

 

次の仕事を探す前に、1か月ほど休暇をとって日本に一時帰国する予定です。

久しぶりに日本の春を楽しんで、その後はデンマークで就職活動です。

今後のことは分かりませんが、ティナに出会えたように、この次もまた良いご縁に巡り合えると良いなと思います。

 

ブログの今後は未定ですが、少しずつまたデンマークの生活や椅子張職人のことをお伝えできればと思います。

みなさん、素敵な春の日をお過ごし下さい。

現場研修(Læreplads)54 GETAMAについて

GETAMAで働き始めて2週間が経った2月9日の未明に、なんとGETAMAの工場が大規模な火災に遭ってしまいました。

 

100年以上続く老舗家具メーカーの大規模火災は、デンマークでニュースになりました。

https://nordjyske.dk/nyheder/nordjylland/voldsom-brand-i-moebelfabrik/4787029

 

火災が落ち着いた3日後に、社員全員が工場の焼け残った建物に集まりました。

私は社員ではありませんが、一緒に働き始めたところだったので、他の社員のみなさんと同じように集まって、話を聞きました。

 

2週間しか働いていない私でさえ、焼け落ちた工場を見るのはとてもショッキングな出来事でした。

長年ここで働いてきた社員さんたちの気持ちを考えると、本当に辛いです。

 

GETAMAはアットホームな雰囲気で、社員のみなさんもやさしく、とても良い職場環境でした。

火事が起こる前には、上司と今後のことを前向きに検討していくことで話し合っていたので、私も本当に残念です。

 

GETAMA本社から詳細な情報が出ていない以上、私の方から詳細をお伝えすることは控えますが、工場再開には、まだ当分時間がかかりそうです。

早期の工場再開を願いながら、私にもできることがあればご協力させていただきたいと思っています。

 

今はGETAMAで働けなくなってしまったので、ティナの工場でまた毎日お世話になっています。

GETAMAで働き始めた初日にいただいた手提げと水筒です。
当分使えそうにはありません。

 

工場が火事になる前日に、たまたま工場の窓から撮った写真です。
窓の外の平和な景色に癒されました。

 

現場研修(Læreplads)53 大雪と新しい職場

2024年の仕事始めは、大雪で始まりました。

ここ数年雪の少なかったデンマークでは珍しく、1月3日は一日中大吹雪に見舞われて、大変でした。

そこかしこで車が雪のために立ち往生したり、交通事故が多発したりして、交通網が麻痺してしまいました。

救助に向かう救急車やパトカーも、大雪のために現場に到着できない状態で、軍隊のタンク車が救急車両の先導のために出動したのですが、タンク車すら横転してしまう始末。

高速道路で立ち往生してしまった自動車の運転手たちは、救助が到着できずに、吹雪の中そのまま車で一夜を明かし、立ち往生から20時間以上経ってようやく車を移動できたようです。

 

私は1月3日から仕事始めの予定だったのですが、ティナが危ないから出勤しなくて良いと連絡をくれて、仕事始めは翌週の1月8日からとなりました。

吹雪が去った後は、シベリアからの寒波で気温が昼間でもマイナス10℃になるなど寒い日が続き、雪がしばらく溶けずに残ったままでした。

先週からやっと気温がプラスになって雪も溶け、道路の凍結からも解放されて、ほっとしています。

ティナの工房から、綺麗な朝焼けが見えました。

 

さて、年明けのティナの工房では、同じ作業を繰り返す大量の注文がいくつかあったので、ひたすら作業の日々でした。

近くの学校の椅子の座面の張替え約50脚

ホテルのベッドヘッド約100個

ひたすら作業が終わると、その後はいくつか椅子の座面の張替作業やソファの張替作業を行いました。

 

そして突然ですが、来週から週3日だけ、デンマークの老舗家具メーカーGETAMAで働かせてもらうことになりました。

ティナの工房での研修期間は4月までの契約なのですが、実はティナの工房では、今お客さんからの注文が少なくて、私がフルタイムで働けるほどの作業量がないのです。

ティナのお客さんの多くは個人のお客さんなので、どのタイミングでどれくらいの量の仕事が来るかはマチマチで、忙しいときもあれば、ヒマなときもある、というような状態です。

 

元々、研修期間終了後に継続して私をフルタイムで雇うことは難しい、という話はティナから聞いていたので、研修が終わったら新しい仕事先を探す予定でした。

 

ティナは、独立する前は10年以上GETAMAで働いていた優秀な椅子張り職人だったのですが、今GETAMAの工場がすごく忙しいらしく、ティナにGETAMAに戻ってきてくれないかと連絡があったそうです。

でも、ティナは自分の工房があるので、代わりに私を貸し出すことにしたようです。

 

今回は試験的に週3日働きますが、上手くいけばそのままGETAMAで雇ってもらえるかもしれません。

研修が終われば仕事を探す予定だったので、とてもありがたいお話です。

週2日はそのままティナの工房で働く予定です。

まだどうなるかは全く分かりませんが、新しい仕事環境も楽しみです。

ティナの工房の帰り道、遠回りしてGETAMAに寄ってみました。
工場の真ん前に夕日が沈んで、とてもキレイでした。

 

卒業試験(Svendeprøve)5週目 卒業試験終了

完成した椅子の提出期限は、水曜日の15時25分。

提出期限内に、無事、卒業試験を受けている生徒全員の椅子が完成しました!

口頭試験が行われる教室に、課題を全て提出できました!

課題を提出し終えた水曜日の夜は、クラスメイトたちと街で祝杯をあげました。

街のスケートリンクは、たくさんの子どもたちで賑わっていました。

課題の終わった後のビールとごはんの美味しいこと!

そして、金曜日はとうとう最後の口頭試験でした。

無事に口頭試験を終えて、卒業試験に合格しました。

 

今回卒業試験を受けた6人の生徒が全員口頭試験を終えた後、卒業証明書の授与式がありました。

みんなの家族や友人、それぞれの研修先の師匠や同僚たちも集まって、みんなで卒業をお祝いしました。



2020年1月に基礎コースから始まった椅子張り職人の学校生活。

自分が卒業試験に合格して、デンマークで正式な椅子張り職人としてのキャリアをスタートさせられるなんて、4年前には想像もできませんでした。

 

ティナを始めとして、たくさんの素晴らしい出会いに恵まれて、卒業を迎えられたことに心から感謝しています。

苦しいときや辛いとき、いつも助けてくれた先生やクラスメイト、励まし支え続けてくれた夫には本当に感謝しています。

4年間、一緒にがんばってきたクラスメイトとの出会い、尊敬してやまないティナとの出会いは、私の人生の宝物です。

 

この後は、3か月ほどティナの工房で最後の研修期間を行い、やっと正式に椅子張り職人の教育システムの全行程を終了することになります。

 

いつもブログを読んでくださるみなさん、やさしく見守っていただき、ありがとうございます。

あと3か月、最後までがんばります。

家族、友人、ティナから花束やプレゼント、手紙をいただきました。

 

卒業試験(Svendeprøve)4週目 布張り作業と雪景色

今週は椅子の仕上げの張り作業をどんどん進めていきました。

まずは座面と背面を完成させます。 背面は前回より上手にできました!

その後、アームの内側の張地の柄の位置を座面と背面に合わせて切り出し、ミシンで内側と外側の張地を縫い合わせてアームに被せます。

今週の作業はここまでです。

ありがたいことに、今週も作業は順調に進みました。

 

椅子張りは来週の水曜日に完成させなくてはならないので、残された時間はあと3日、19時間20分です。

事前に立てた作業工程時間の計画より早めに作業を進められているので、何とか残り時間で完成できそうで、少しホッとしています。

完成まであと少し!最後までがんばります!

 

今週は放課後にクラスメイトたちと街に繰り出して、クリスマスショッピングと外食を楽しみました。

屋外に設営されたスケートリンクの横に巨大なクリスマスツリーがありました。

学校のあるSkiveの街は、すっかりクリスマスデコレーションで彩られています。

ところで、今週は最高気温がずっと氷点下という寒い日が続いたのですが、水曜日の夜から雪が降り始めて、一晩であっという間に雪景色になってしまいました。

学校の敷地内があっという間に雪だらけになってしまいました。

私の住む街の商店街もすっかり雪景色です。

さて、卒業試験もいよいよ残り1週間です。

来週の水曜日に椅子張り作業を終えて課題を提出した後は、金曜日に最後の口頭試験が待っています。

デンマーク語での口頭試験はいつもとても緊張しますが、最後までがんばります。

卒業試験(Svendeprøve)3週目 下地張り完了!もうすぐクリスマスシーズン

今週は椅子の下地張りが終わって、張地作業に着手できました。

試験は順調に進んでいて、とてもありがたいです。

下地作業が無事終わりました

張地の型を作って、慎重に切り出します

座面の張地の模様がなかなかピッタリ揃わなくて、何度も縫い直しました。

今週の作業はここまでです。

来週は、張地作業をどんどん進めていく予定です。

 

デンマークでは少しずつクリスマスシーズンに近づいてきました。

今週から、学校のあちこちでクリスマスツリーを見かけるようになりました。

学生寮に飾られたクリスマスツリー

今日は友だちのお誕生日パーティーに参加する予定なのですが、クリスマスのプレゼント交換ゲームをするということなので、ゲーム用のプレゼントとサンタ帽子を準備しました。

週末は、家族や友人と楽しく過ごして、また来週からがんばります!

サンタ帽をかぶって、みんなでゲームで盛り上がります!

 

卒業試験(Svendeprøve)2週目 順調な椅子張り作業とサマーハウス

卒業試験2週目が無事終わりました。

とにかく集中して、今週もどんどん作業を進めました。

スプリングの高さ調整が、今までで最速で完成しました!

スプリングの上に麻布、麻草、乾燥した植物、また麻布を被せて、麻ヒモで縫い付ける作業も順調に進みました。

その上に動物の毛とコットンマットをのせて、下地の白い布を縫い付ける作業の途中までで、今週は終了です。

今のところ、作業は順調に進んでいて、とてもホッとしています。

最初の難しい作業(スプリングの高さ調整)が予想以上に短時間で完了できたので、時間と心に余裕ができて、その後の作業もスムーズに進んでいます。

 

この調子で、今後の作業も順調に進めていきたいです。

 

ところで先週末は、義理の母と妹が休暇を過ごしているサマーハウス(貸別荘)に遊びに行ってきました。

 

静かな内海の目の前に立つ小さなサマーハウスには、薪ストーブやジャグジー風呂があって、試験で疲れた体をゆっくり癒すことができました。

かわいい水色のサマーハウスでした

薪ストーブで暖かい室内

サマーハウスの目の前に広がる静かな海

暗くなる前に、義理の妹の犬と海辺に散歩に行きました。

たまには日常から離れて、こんな風に静かに景色を楽しんだり、家族とのおしゃべりや食事、お風呂を楽しむのはとても良い時間でした。

がんばって長距離運転したかいがありました。

 

さて、卒業試験も残り3週間。がんばります。