北欧古物専

デンマークで椅子張り職人になりました

デンマークで就職

しばらくブログを更新できていませんでしたが、8月からデンマークの家具メーカーで、職人として働き始めました。

 

ティナの工房での現場研修が終わった後に1か月ほど日本に一時帰国していたのですが、デンマークに戻ってから、最初に就職活動した会社で、ありがたいことにそのまま採用していただけることになりました。

 

椅子張り職人として働ける就職先は限られているので、とりあえず家から一番近い就職先の候補として、一番最初に連絡した会社だったのですが、ちょうど長年働いていた職人さんが定年退職されたところで、新しく職人さんが必要とのことでした。

 

ただ、必要なのはミシン縫い職人で、椅子張り職人ではないとのことでした。

ティナの工房では、ミシン縫いはほとんどティナが行っていて、私はミシン縫いの経験があまりないのですが、私が椅子張り職人の教育課程をデンマークで正式に終了した有資格者であることへの信頼が大きかったようで、私の意欲も感じていただけ、とりあえず3か月の試験採用をしていただけることになりました。

 

会社は10人ほどの職人さんと、それ以外の事務、営業、経営陣を含めて20人弱の小さな家具メーカーです。

 

田舎の小さな会社なので、ゆったりしていて、和気あいあいとした家族のようなアットホームな雰囲気で、私はとても気に入っています。

会社の外には、のどかな景色が広がっています。

私の自宅から車で20分くらいの場所で、通勤時間はティナの工房の半分なので、時間的にも体力的にも楽になって、とても助かっています。

 

3か月間の試験採用期間は順調に終わり、そのまま正社員採用となりました。

そして正社員になると同時に、新たにCADの図面作成をしてもらえないかとお願いされて、そちらも担当させてもらうことになりました。

 

というのも、数年前に椅子張り用の裁断を自動で行う大きな機械を導入したのですが、自動で裁断を行うためには、張地の型紙を専用のCADソフトで書きこまなくてはならず、社内にそのCADソフトを使いこなせる人がいなくて困っていたとのことでした。

 

私は日本で建築士をしていたので、CADが得意だろうと思われていたようです。

デンマークで椅子張り職人の教育も受けていることから、椅子張りの全般的な知識もあるので、どうやら持ってこいの人材だったようです。

 

小さな会社ですから、CAD専門の人材を雇うほどCADの仕事がある訳でもないので、私は基本的にはミシン職人として椅子の張地を縫い合わせているのですが、今は週2回、午前中だけCADの作図作業をしています。

 

このCADソフトが少し特殊で、今まで私が使ったことのあるソフトと違って最初は戸惑ったのですが、500ページもある英語のマニュアルをがんばって読みながら、いろいろ試しながら、今は何とか仕事に必要なレベルまでは使いこなせるようになりました。

 

自動の裁断機を扱う職人さんが2人いるのですが、2人ともCADは使えないので、今までCADで登録してある型紙のサイズを少し手直ししたり、新しい型紙を登録したりということができずに困っていたそうなので、私がCADで問題をどんどん解決していくので、とても喜んでもらえていて、私も嬉しいです。

 

今はCADの図面作成をしながら、新たに自動裁断機の機械操作も学んでいます。

小さい会社なので、1人でマルチに課題をこなせる人材が必要みたいですね。

 

私もいつも同じ作業をするよりも、いろいろな課題に挑戦することが好きだと会社には伝えてあるので、WinWinに仕事が成り立っていて、嬉しい限りです。

 

ミシン職人としての腕もまだまだ磨きたいですが、自動裁断機も使えるようになったら、そのうち椅子張り職人の仕事にも手を伸ばしていこうと思っています。

 

せっかく椅子張り職人の資格を持っているので、やっぱり椅子張りがしたいですからね。

会社には2人の椅子張り職人がいて、今のところはそれで充分なようです。

椅子のデザイン的にミシンで縫うことが多いので、どうしてもミシン縫い職人の方が人数が必要なのですが、気長に機会を待とうと思います。

 

ティナの元で学んだ古い椅子の修理もしたいのですが、今はありがたいことに就職が決まったこの会社で、がんばろうと思っています。

学ぶことは、まだまだたくさんあります。

 

会社の規定で社内の情報をお伝えすることができないので、ティナの工房のように仕事の様子をお伝えすることはできませんが、日々楽しく学びながら、働かせていただいています。

 

これまでは、椅子張り職人になるための学校での様子や、研修先のティナの工房での様子を中心にブログでお伝えしてきましたが、学校が終わり、新しい就職先では仕事の詳細をお伝えできないので、今後のブログの方針を決めかねております。

 

こんなことが知りたい!などのご要望があれば、教えてくださいね。

それではみなさん、素敵なお正月をお過ごしください。

3 days of design 2024 その2

前回に引き続き、コペンハーゲンで開催されたインテリアのデザインイベント3 days of designのレポートです。

 

https://www.3daysofdesign.dk/

 

【Fritz Hansen】

https://www.fritzhansen.com/ja/?gad_source=1&gclid=Cj0KCQjwt4a2BhD6ARIsALgH7DrO7GfuXRZtO491YiOTc9ejOKonkuLRmEc96A1qxXr_KJRZDG4ZGLUaAtEfEALw_wcB

 

とても素敵なカフェが展示会場となっていたのは、日本でも人気のFritz Hansen。

新しく建てられたオシャレなカフェでは、展示だけではなく、イベント期間中にサンセットカクテルパーティーや飲食サービスなどもあり(招待客のみ)、たくさんの人がくつろいだ様子で楽しんでいました。

会場は新しいオペラハウスのすぐ隣でした。

曲面のぐねぐねしたガラス張りの平屋の建物の上には、植物の生えた屋根が軽やかにのっています。 有機的で背景に溶け込むような、環境に配慮されたデザインです。

外観は小ぶりな平屋のカフェなのですが、中に入ると、中央には地下に向かって吹き抜けと螺旋階段が続き、立体的で広がりのある空間となっています。

地下への階段を下りた先には、ジャングルの中に佇むように、エッグチェアが展示されていました。

その他の家具は、カフェスペースに展示されていました。 屋外にもフリッツハンセンのアウトドア家具が展示されており、みなさんくつろいだ様子で座っていました。

こちらは初めて見たフリッツハンセンの椅子です。 シドニーオペラハウスを設計したことで有名なデンマーク人のデザイナー、ヨーン・ウツソンのデザインです。

 

【Louis Poulsen】

https://www.louispoulsen.com/ja-jp/private

 

日本でも人気の照明ブランド、ルイスポールセンの展示会場にも行ってきました。

趣のあるこちらの建物全体が、オフィス兼ショールームになっています。

建物の外には、ルイスポールセンの象徴的な照明器具の一つであるアーティチョークを題材にしたオブジェが展示されていました。

なんとなくアーティチョークのエレメントが見て取れる…ような…

展示会場の中には、アイコニックな照明器具がたくさんのカラーバリエーションでずらりと並びます。

クラシックなデザインも素敵です。

こちらは無料で配布されていたポスター。 今年はアーティチョーク推しなのか、あちらこちらにアーティチョークがありました。

こちらでは、アーティチョークの組み立て作業の実演が行われていました。

写真中央の女性が肩にかけているのは、無料で配布されていたルイスポールセンのエコバッグです。 こういったイベントグッズがもらえるのも、嬉しいですね。

 

【MALTE GORMSEN MØBELSNEDKERI】

https://maltegormsen.com/

 

工房の名前にもなっているMalte Gormsenさんという木工職人さんが立ち上げた家具工房です。

私は今回の3daysofdesignで初めて知った工房です。

 

私の好きなデンマーク人デザイナー、ナナ・ディッツェルが最後にデザインしたバースツールをこちらの工房で制作していて、その制作秘話を娘のデニー・ディッツェルさんと一緒に紹介する、というイベントが開催されていたので、参加してきました。

 

https://maltegormsen.com/journal/3daysofdesign-2024/

 

ショールームの看板は、控えめでシンプルなデザイン

こちらがナナ・ディッツェル最後の作品 Flower

ナナ・ディッツェルの椅子や生活について説明する娘のデニーさん(写真中央)

少人数でゆったりとした雰囲気の中、ワイン片手にじっくりお話を聞くことができました。

 

ナナ・ディッツェルが亡くなる最期のときまで、デザイナーとしてデザイン活動を続けていたこと、いくつになっても新しい技術や素材に好奇心旺盛で、常に新しい挑戦をしていたことなど、母の生活をそばで見続けていた娘のデニーさんからお話を伺えることは、とても貴重で感動的なひと時でした。

 

プレゼンテーションの後に少し時間があったので、私は勇気をふりしぼって、デニーさんに話しかけてみました。

とても気さくな方で、一緒に2ショット写真まで撮っていただいて感激しました。

 

日本から来たこと、日本でナナ・ディッツェルさんの家具に携わる仕事をしていたこと、デンマークで椅子張り職人になったことなどをお話したら、デニーさんのお父さん(ナナ・ディッツェルの夫で家具デザイナーのヨーエン・ディッツェル)もデザイナーの学校へ行く前に椅子張り職人の学校へ通っていたことを教えてくださいました。

 

当時は、家具デザイナーになるためには事前に職人教育を終えないといけない決まりだったのですが、ヨーエンさんは左利きのために木工職人の教育を受けさせてもらえず、代わりに椅子張り職人の教育を受けたのだそうです。

 

左利きだから仕方なく椅子張り職人とは、なかなか面白いお話ですね。

 

ちなみにイベントは全てデンマーク語だったのですが(参加者がたまたま全員デンマーク人だったようです)、英語対応もしてくれるはずなので、3daysofdesignでデンマーク語のみのイベントに出会ってしまったら、英語スピーチをお願いしてみて下さいね。

 

【KOYORI】

https://www.koyori-jp.com/

 

日本から出展のKOYORIは、日本の家具を世界に広めようと奮闘している、熱い志を持った新しい家具ブランドです。

3daysofdesignには去年から参加されています。

 

提灯を使ったこちらの展示会場は、コペンハーゲンを拠点に活躍するデザインユニット、ガムフラテージのデザインです。

 

KOYORIさんのブランド名のデザイン、素敵ですね。

ガムフラテージデザインのKigoシリーズは、イサムノグチの彫刻デザインからインスピレーションを受けたのだとか。
イサムノグチの庭園美術館は私も大好きなので、勝手に親近感を抱いています。

新作のMakuriチェア

窓の外のコペンハーゲンの街並みも素敵です。

 

【The Radio House】

https://vilhelmlauritzen.com/project/radiohouse

 

こちらは3daysofdesignとは関係ないのですが、3daysofdesignの会期中にたまたま無料コンサートが開催されていたので訪れた、コペンハーゲンのラジオハウスです。

今は音楽学校として使用されていますが、元々はデンマーク国営放送の本社だった建物で、デザインはヴィルヘルム・ラウリッツェンです。

ラジオハウスの一部の家具は、当時ラウリッツェンの事務所で働いていたフィンユールと共同でデザインされたものだそうです。

 

チーク、真鍮、アニリンレザーなど、時間と共に味わい深くなる素材を使った、有機的で機能的なデザインが美しすぎて、何とも贅沢な空間でした。

ミッドセンチュリーデザインの真骨頂を見た思いです。

 

こんな素敵なコンサートホールで無料コンサートを開催するデンマーク、懐が深すぎます。

 

階段ホールは吹き抜けの両サイドが全てガラス張りになっていて、とても気持ちの良い空間になっています。

階段ホールの内側から見える外の緑が美しいですね。 内装にふんだんに使われているチークと、階段や窓枠の白とのコントラストが美しいです。

建物の入口ホールの大理石も、とても贅沢ですね。

会場に着いたら、コートや大きな荷物などを預けます。 どこも抜かりなく美しい。

 

荷物を預けて身軽になったら、感動的に美しい階段ホールへと続きます。
踊り出したい気分です。

 

 

2階席の外に少し休憩できるスペースがあるのですが、椅子や照明のデザイン、天井の曲線もまた美しいです。

コンサートホールの中もふんだんにチークが使用されていて、ガラスの照明器具も美しく、とても雰囲気があります。

 

ホール中央には、見事なパイプオルガンもありました。

座席は、なんと経年変化の激しいアニリンレザー。 公共の建物でこの素材を使うとは、建築家の素材に対する並々ならぬ熱意を感じます。

どこを見ても美しすぎて、ため息の出る素晴らしい建物でした。

コペンハーゲンに行く際には、ぜひ訪れてみてください!

 

 

今回3daysofdesignで見た会場全ては紹介しきれていませんが、特に印象に残った会場をご紹介させていただきました。

 

とても3日間ではまわり切れない規模ですが、思いがけず新しい出会いや発見があったり、普段は会うことのできないデザイナーの生の声を聴くことが出来たりと、とても充実した3日間となりました。

今回も、日本から来てくださった友人知人のみなさんとお会い出来て、そこでも新しい出会いがあり、本当に楽しかったです。

こういう人とのつながりが本当にありがたく、宝物だなと思います。

3 days of design 2024 その1

今年も去年に引き続き、コペンハーゲンで開催されたインテリアのデザインイベント3 days of designへ行ってきました。

https://www.3daysofdesign.dk/

 

お天気は去年のような好天ではなく、今年は曇りと雨の合間にたまに晴れ間があるような寒いデンマークの初夏の天候だったのですが、そんなこととは関係なく、イベントはとても盛り上がって熱気に包まれていました。

 

去年のイベントの様子はこちらの記事で紹介しているので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

https://hokuohkomonosen.hatenablog.com/entry/2023/07/03/040907

 

3days og designは、大きな一つの会場で行われる展示会ではなく、コペンハーゲンの街中のあらゆる場所で、3日間だけたくさんのメーカーやデザイナーがインテリアの展示会を行うイベントで、誰でも自由に見学することができます。

会期中は、それぞれのメーカーが工夫を凝らした展示以外にも、たくさんのイベントを開催しています。

同じ時間帯にたくさんのイベントが同時開催されるので、これは参加したい!というイベントにピンポイントで参加することになります。

イベントの内容は本当に様々で、職人さんの家具制作の実演やデザイナーのトークショー以外にも、軽食のサービスやカクテルパーティーなど、たくさんのイベントが開催されていて、会場を見飽きるということがありません。

特にトークショーでは、普段はなかなか出会うことのない有名デザイナーたちの生の声を聞ける絶好の機会です。

イベント情報や地図を掲載したアプリが、イベント開催期間の数週間前からダウンロード出来るようになるので、参加される場合は、是非アプリをダウンロードすることをおススメします。

それでは、イベントの様子をお伝えします。

今年は鮮やかなピンクの風船が3 days of designのイベント会場の目印です。
(去年は黄色だったので、毎年テーマカラーが変わるようです。)

 

【PP Møbler】

https://pp.dk/

 

デンマークの有名なビールメーカー、カールスバーグの昔の工場跡地の一角にあるこちらのショールームは、とても趣のある建物の1階に面しています。

レンガやタイルの色が落ち着いた雰囲気です。

ショールームに入るとすぐ、大きなウェグナーの写真にじっと見つめられます。

去年は白一色だった壁が今年はカラーなので、各コーナーで違う雰囲気を楽しめます。

RARE EDITIONSと書かれたこちらの展示は、珍しいダークな木材のシックな雰囲気。

今年は職人さんの実演とともに、原材料の展示もありました。

PP Møblerでは、ウェグナーの椅子を作るために必要な厚みのある引き板が市場に出回らないため、自分たちで原木から購入するそうです。

木材へのこだわりが半端ない、木工職人集団。

左右のアームの木目も揃えるという、もはや芸術作品とも言える椅子たちです。

 

そして、今年何と言っても面白かったのは、PP Møbler 社長のキャスパーさんとウェグナーの娘さんのトークショーです。

社長のキャスパーさんとウェグナーの娘のマリアネさんのトークショーの様子

二人のウェグナーへの情熱が熱すぎて、トークショーは1時間半にも渡りました。

ウェグナーは木工の道に進む前から、木彫刻で並外れた芸術的な才能を発揮していた子どもだったこと。

南ユトランドの田舎町で木工職人になった後、コペンハーゲンで見た木工家具のレベルの高さに驚愕したこと。

アメリカの工場での生産の話もあったけど、職人とすぐに話のできる距離にないと、自分のデザインした家具の質を保つことができないと危惧して、デンマーク国内での生産にこだわったこと。

などなど、尽きることのないお二人のお話は本当に面白かったです。

 

「ウェグナーさん、このお二人がいればあなたの家具はその品質を高いまま、あるいは昔以上に高いレベルで、この後も世に送り出されていくので心配いりませんよ」と伝えたい気持ちになりました。

 

【House of Finn Juhl】

https://finnjuhl.dk/?gad=1&gclid=Cj0KCQjwy9-kBhCHARIsAHpBjHhg9SdDI2_XLd7vZpG60vmCV1IQKoA6eIkD8tzgcbbKIZzOfk3YSdcaAsLEEALw_wcB

 

こちらはその名の通り、フィン・ユールの家具を制作しているメーカーです。

House of Finn Juhlの展示は、去年とさほど変わらない様子でした。

会場では無料でお酒を提供していたので、フィン・ユールの椅子に座りながらワインやウィスキーを飲むという贅沢な体験ができるのは、魅力的ですね。

見ている私は、どうしてもハラハラしてしまいます。

それ以外にも、フィン・ユールの水彩画の絵葉書を自由に持ち帰れたりと、ファンにはたまらないサービスがたくさんあります。

 

入口横に飾られたアニリンレザーのチーフテンチェアー

アニリンレザーのNo.45。
こんな椅子に座りながらお酒を飲めちゃう3daysofdesign、太っ腹ですね。

去年は黒の革張りだったエジプシャンチェアは今年は白い布張りです。
雰囲気がガラッと変わりますね。

持ち帰り自由なフィン・ユールの水彩画。贅沢ですね!

 

【Fredericia Funiture】

https://fredericia.com/

 

ボーエモーエンセンやナナディッツェルなど、デンマークを代表するデザイナーの高品質な家具を数多く制作しながら、新しいデザイナーとも次々と新作を発表しています。

 

落ち着いたナチュラルな色合いの家具たち

同じ色合いでも、張地の表情で椅子の雰囲気も変わってきます。

余った生地を張り合わせてデザインされ、環境に配慮された椅子張りの展示。

革張りの多いオックスチェアも、布張りだとナチュラルで柔らかい雰囲気です。

ボーエモーエンセンのスパニッシュチェアの展示

スパニッシュチェアは、昔は2本必要だった後ろ足の間の貫が、今では技術が進歩して1本でも大丈夫になったそうです。

モーエンセンは元々は貫を1本でデザインしたそうですが、それだと構造が弱いので2本になっていたそうです。

技術の進歩に合わせて、デザインも進歩させていく姿勢が素晴らしいですね。

 

こちらはオックスチェアの椅子張りの実演

この張職人さんは、実は私の椅子張り学校時代のクラスメイトの上司でして。

卒業式でたまたま少しお話させていただいたことを覚えていてくれて、話しかけてもらえました。

 

ショールームの最上階の隅でくつろぐデザイナーのジャスパー・モリソン

この日はデザイナーのジャスパー・モリソンのトークショーがあるということで、たくさんの人がショールームを訪れていました。

私も楽しみに参加したのですが、人があまりにも多すぎて声がほとんど聞こえない上に、短時間で終了してしまったので、少し残念でした。

 

是非とも聞きたいトークショーに参加する場合は、少し早めに会場入りして良い場所を抑えておくと良いと思います!

 

【mater】

https://materdesign.com/

 

サスティナブルな製品作りをしているデンマークの家具メーカーです。

コーヒー豆や乳製品のカートンなど、廃材を加工した材料を使って、環境問題に取り組んでいます。

去年は教会の中だった展示会場ですが、今年は街中の一角に。

 

私がとても良いなと思ったのは、今年新しく発表された新素材の新商品です。

こちらがその新商品Alderです。

Alderの材料は、サトウキビの殻、コーヒー豆のカス、木クズの3つです。

見た目や触り心地はプラスチックによく似ています。

材料を作るときに接着剤などの化学物質は使わないのかと質問したところ、サトウキビの殻がべたべたして、ちょうどつなぎの役割をしてくれるので、全て自然由来の廃材を再利用しているとのことでした。

なので、この家具を細かく刻んで自然に放置すると、半年ほどで90%の材料が自然に還るそうです。

materでは、使われなくなったAlderの家具を改修して、それをまたリサイクルして、新たなAlderを制作することも可能だそうです。

 

廃材を利用して制作した家具を改修して、それをまたリサイクルして新たな家具を制作して、最終的には土に還すことも可能という、とても環境に配慮された家具制作の取り組みをしています。

Alderの素材は見た目も素朴で可愛くて、とても素敵な家具だと思いました。

 

ここまでは、去年もご紹介させていただいたメーカーの今年の展示内容です。

長くなってしまったので、その他の展示は次回またご紹介します。

現場研修(Læreplads)55 現場研修終了

冬の間ずっと暗かった朝の通勤時間がやっと明るくなってきて、とても嬉しいです。

朝工房に着くと、きれいな朝焼けが見えました。

GETAMAで働けなくなってしまったので、その後はずっとティナの工房で働いていました。

 

いろいろな椅子の張替をする中で、私が一番面白いなと思うのは、古い椅子の修理です。

特に、ウレタンフォームを使っていない時代の椅子は、例えば60年以上前の自然素材をそのまま再利用することができるので、感動します。

ウレタンフォームはとても便利で快適な座り心地ですが、ほとんどの場合は30年も経つとボロボロになってしまいます。(保存状態にもよりますが)

先日張り替えた椅子は、下地材は全部自然素材でした。

麻草や動物の毛を何層にも重ねます。

古い麻草も、ほぐせばまた何十年と使えます。

均等にならして敷き詰めます。

この椅子の下地の修理で新しく使った材料は麻のテープのみで、それ以外は全て元の材料を使っています。

 

麻のテープは年月と共に傷んで耐久性が衰えてしまうので、張替えが必要です。

新しい麻テープに張り替えました。

昔の自然素材は質が良く、何十年と長く使える素材なので、本当に優秀です。

そして、こんなにボロボロになった古い椅子でも、ちゃんと修理して何十年と使うデンマーク人の物を大切にする文化は、とても素敵だなと思います。

 

さて、私の現場研修期間はこれで無事に終了しました。

契約書上は4月1日まで研修期間があるのですが、デンマークは今週からイースター休暇に入るので、実質的には先週の金曜日が最後の研修日となりました。

 

最後の日には、ティナが近所のベーカリーから美味しい焼きたてパンを買ってきてくれて、工房で2人で、研修の終了をお祝いしました。

 

研修の3年半、ティナには本当にお世話になりました。

たくさん失敗して迷惑もたくさんかけましたが、研修中にティナに怒られたことは一度もありません。

いつだって、失敗は誰でもするもの、上達するには練習するしかない、と前向きな言葉をかけてくれて、新しいことにもたくさん挑戦させてくれました。

本当に尊敬する大好きな師匠の元を去るのはとても寂しいですが、これからも失敗にめげずに、少しずつ職人としての腕を磨いていきたいと思います。

 

4年間私のブログにお付き合いいただき、見守っていただき、ありがとうございました。

これで晴れて、デンマークで椅子張り職人になることができました。

日本には、デンマークのように椅子張職人になるための本格的な教育プログラムはないと思いますが、私の経験が、デンマークの職人教育に興味のある方のお役に少しでも立てたら嬉しく思います。

 

次の仕事を探す前に、1か月ほど休暇をとって日本に一時帰国する予定です。

久しぶりに日本の春を楽しんで、その後はデンマークで就職活動です。

今後のことは分かりませんが、ティナに出会えたように、この次もまた良いご縁に巡り合えると良いなと思います。

 

ブログの今後は未定ですが、少しずつまたデンマークの生活や椅子張職人のことをお伝えできればと思います。

みなさん、素敵な春の日をお過ごし下さい。

現場研修(Læreplads)54 GETAMAについて

GETAMAで働き始めて2週間が経った2月9日の未明に、なんとGETAMAの工場が大規模な火災に遭ってしまいました。

 

100年以上続く老舗家具メーカーの大規模火災は、デンマークでニュースになりました。

https://nordjyske.dk/nyheder/nordjylland/voldsom-brand-i-moebelfabrik/4787029

 

火災が落ち着いた3日後に、社員全員が工場の焼け残った建物に集まりました。

私は社員ではありませんが、一緒に働き始めたところだったので、他の社員のみなさんと同じように集まって、話を聞きました。

 

2週間しか働いていない私でさえ、焼け落ちた工場を見るのはとてもショッキングな出来事でした。

長年ここで働いてきた社員さんたちの気持ちを考えると、本当に辛いです。

 

GETAMAはアットホームな雰囲気で、社員のみなさんもやさしく、とても良い職場環境でした。

火事が起こる前には、上司と今後のことを前向きに検討していくことで話し合っていたので、私も本当に残念です。

 

GETAMA本社から詳細な情報が出ていない以上、私の方から詳細をお伝えすることは控えますが、工場再開には、まだ当分時間がかかりそうです。

早期の工場再開を願いながら、私にもできることがあればご協力させていただきたいと思っています。

 

今はGETAMAで働けなくなってしまったので、ティナの工場でまた毎日お世話になっています。

GETAMAで働き始めた初日にいただいた手提げと水筒です。
当分使えそうにはありません。

 

工場が火事になる前日に、たまたま工場の窓から撮った写真です。
窓の外の平和な景色に癒されました。

 

現場研修(Læreplads)53 大雪と新しい職場

2024年の仕事始めは、大雪で始まりました。

ここ数年雪の少なかったデンマークでは珍しく、1月3日は一日中大吹雪に見舞われて、大変でした。

そこかしこで車が雪のために立ち往生したり、交通事故が多発したりして、交通網が麻痺してしまいました。

救助に向かう救急車やパトカーも、大雪のために現場に到着できない状態で、軍隊のタンク車が救急車両の先導のために出動したのですが、タンク車すら横転してしまう始末。

高速道路で立ち往生してしまった自動車の運転手たちは、救助が到着できずに、吹雪の中そのまま車で一夜を明かし、立ち往生から20時間以上経ってようやく車を移動できたようです。

 

私は1月3日から仕事始めの予定だったのですが、ティナが危ないから出勤しなくて良いと連絡をくれて、仕事始めは翌週の1月8日からとなりました。

吹雪が去った後は、シベリアからの寒波で気温が昼間でもマイナス10℃になるなど寒い日が続き、雪がしばらく溶けずに残ったままでした。

先週からやっと気温がプラスになって雪も溶け、道路の凍結からも解放されて、ほっとしています。

ティナの工房から、綺麗な朝焼けが見えました。

 

さて、年明けのティナの工房では、同じ作業を繰り返す大量の注文がいくつかあったので、ひたすら作業の日々でした。

近くの学校の椅子の座面の張替え約50脚

ホテルのベッドヘッド約100個

ひたすら作業が終わると、その後はいくつか椅子の座面の張替作業やソファの張替作業を行いました。

 

そして突然ですが、来週から週3日だけ、デンマークの老舗家具メーカーGETAMAで働かせてもらうことになりました。

ティナの工房での研修期間は4月までの契約なのですが、実はティナの工房では、今お客さんからの注文が少なくて、私がフルタイムで働けるほどの作業量がないのです。

ティナのお客さんの多くは個人のお客さんなので、どのタイミングでどれくらいの量の仕事が来るかはマチマチで、忙しいときもあれば、ヒマなときもある、というような状態です。

 

元々、研修期間終了後に継続して私をフルタイムで雇うことは難しい、という話はティナから聞いていたので、研修が終わったら新しい仕事先を探す予定でした。

 

ティナは、独立する前は10年以上GETAMAで働いていた優秀な椅子張り職人だったのですが、今GETAMAの工場がすごく忙しいらしく、ティナにGETAMAに戻ってきてくれないかと連絡があったそうです。

でも、ティナは自分の工房があるので、代わりに私を貸し出すことにしたようです。

 

今回は試験的に週3日働きますが、上手くいけばそのままGETAMAで雇ってもらえるかもしれません。

研修が終われば仕事を探す予定だったので、とてもありがたいお話です。

週2日はそのままティナの工房で働く予定です。

まだどうなるかは全く分かりませんが、新しい仕事環境も楽しみです。

ティナの工房の帰り道、遠回りしてGETAMAに寄ってみました。
工場の真ん前に夕日が沈んで、とてもキレイでした。

 

卒業試験(Svendeprøve)5週目 卒業試験終了

完成した椅子の提出期限は、水曜日の15時25分。

提出期限内に、無事、卒業試験を受けている生徒全員の椅子が完成しました!

口頭試験が行われる教室に、課題を全て提出できました!

課題を提出し終えた水曜日の夜は、クラスメイトたちと街で祝杯をあげました。

街のスケートリンクは、たくさんの子どもたちで賑わっていました。

課題の終わった後のビールとごはんの美味しいこと!

そして、金曜日はとうとう最後の口頭試験でした。

無事に口頭試験を終えて、卒業試験に合格しました。

 

今回卒業試験を受けた6人の生徒が全員口頭試験を終えた後、卒業証明書の授与式がありました。

みんなの家族や友人、それぞれの研修先の師匠や同僚たちも集まって、みんなで卒業をお祝いしました。



2020年1月に基礎コースから始まった椅子張り職人の学校生活。

自分が卒業試験に合格して、デンマークで正式な椅子張り職人としてのキャリアをスタートさせられるなんて、4年前には想像もできませんでした。

 

ティナを始めとして、たくさんの素晴らしい出会いに恵まれて、卒業を迎えられたことに心から感謝しています。

苦しいときや辛いとき、いつも助けてくれた先生やクラスメイト、励まし支え続けてくれた夫には本当に感謝しています。

4年間、一緒にがんばってきたクラスメイトとの出会い、尊敬してやまないティナとの出会いは、私の人生の宝物です。

 

この後は、3か月ほどティナの工房で最後の研修期間を行い、やっと正式に椅子張り職人の教育システムの全行程を終了することになります。

 

いつもブログを読んでくださるみなさん、やさしく見守っていただき、ありがとうございます。

あと3か月、最後までがんばります。

家族、友人、ティナから花束やプレゼント、手紙をいただきました。