今年も去年に引き続き、コペンハーゲンで開催されたインテリアのデザインイベント3 days of designへ行ってきました。
お天気は去年のような好天ではなく、今年は曇りと雨の合間にたまに晴れ間があるような寒いデンマークの初夏の天候だったのですが、そんなこととは関係なく、イベントはとても盛り上がって熱気に包まれていました。
去年のイベントの様子はこちらの記事で紹介しているので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
https://hokuohkomonosen.hatenablog.com/entry/2023/07/03/040907
3days og designは、大きな一つの会場で行われる展示会ではなく、コペンハーゲンの街中のあらゆる場所で、3日間だけたくさんのメーカーやデザイナーがインテリアの展示会を行うイベントで、誰でも自由に見学することができます。
会期中は、それぞれのメーカーが工夫を凝らした展示以外にも、たくさんのイベントを開催しています。
同じ時間帯にたくさんのイベントが同時開催されるので、これは参加したい!というイベントにピンポイントで参加することになります。
イベントの内容は本当に様々で、職人さんの家具制作の実演やデザイナーのトークショー以外にも、軽食のサービスやカクテルパーティーなど、たくさんのイベントが開催されていて、会場を見飽きるということがありません。
特にトークショーでは、普段はなかなか出会うことのない有名デザイナーたちの生の声を聞ける絶好の機会です。
イベント情報や地図を掲載したアプリが、イベント開催期間の数週間前からダウンロード出来るようになるので、参加される場合は、是非アプリをダウンロードすることをおススメします。
それでは、イベントの様子をお伝えします。
【PP Møbler】
デンマークの有名なビールメーカー、カールスバーグの昔の工場跡地の一角にあるこちらのショールームは、とても趣のある建物の1階に面しています。
PP Møblerでは、ウェグナーの椅子を作るために必要な厚みのある引き板が市場に出回らないため、自分たちで原木から購入するそうです。
木材へのこだわりが半端ない、木工職人集団。
左右のアームの木目も揃えるという、もはや芸術作品とも言える椅子たちです。
そして、今年何と言っても面白かったのは、PP Møbler 社長のキャスパーさんとウェグナーの娘さんのトークショーです。
二人のウェグナーへの情熱が熱すぎて、トークショーは1時間半にも渡りました。
ウェグナーは木工の道に進む前から、木彫刻で並外れた芸術的な才能を発揮していた子どもだったこと。
南ユトランドの田舎町で木工職人になった後、コペンハーゲンで見た木工家具のレベルの高さに驚愕したこと。
アメリカの工場での生産の話もあったけど、職人とすぐに話のできる距離にないと、自分のデザインした家具の質を保つことができないと危惧して、デンマーク国内での生産にこだわったこと。
などなど、尽きることのないお二人のお話は本当に面白かったです。
「ウェグナーさん、このお二人がいればあなたの家具はその品質を高いまま、あるいは昔以上に高いレベルで、この後も世に送り出されていくので心配いりませんよ」と伝えたい気持ちになりました。
【House of Finn Juhl】
こちらはその名の通り、フィン・ユールの家具を制作しているメーカーです。
House of Finn Juhlの展示は、去年とさほど変わらない様子でした。
会場では無料でお酒を提供していたので、フィン・ユールの椅子に座りながらワインやウィスキーを飲むという贅沢な体験ができるのは、魅力的ですね。
見ている私は、どうしてもハラハラしてしまいます。
それ以外にも、フィン・ユールの水彩画の絵葉書を自由に持ち帰れたりと、ファンにはたまらないサービスがたくさんあります。
【Fredericia Funiture】
ボーエモーエンセンやナナディッツェルなど、デンマークを代表するデザイナーの高品質な家具を数多く制作しながら、新しいデザイナーとも次々と新作を発表しています。
スパニッシュチェアは、昔は2本必要だった後ろ足の間の貫が、今では技術が進歩して1本でも大丈夫になったそうです。
モーエンセンは元々は貫を1本でデザインしたそうですが、それだと構造が弱いので2本になっていたそうです。
技術の進歩に合わせて、デザインも進歩させていく姿勢が素晴らしいですね。
この張職人さんは、実は私の椅子張り学校時代のクラスメイトの上司でして。
卒業式でたまたま少しお話させていただいたことを覚えていてくれて、話しかけてもらえました。
この日はデザイナーのジャスパー・モリソンのトークショーがあるということで、たくさんの人がショールームを訪れていました。
私も楽しみに参加したのですが、人があまりにも多すぎて声がほとんど聞こえない上に、短時間で終了してしまったので、少し残念でした。
是非とも聞きたいトークショーに参加する場合は、少し早めに会場入りして良い場所を抑えておくと良いと思います!
【mater】
サスティナブルな製品作りをしているデンマークの家具メーカーです。
コーヒー豆や乳製品のカートンなど、廃材を加工した材料を使って、環境問題に取り組んでいます。
私がとても良いなと思ったのは、今年新しく発表された新素材の新商品です。
見た目や触り心地はプラスチックによく似ています。
材料を作るときに接着剤などの化学物質は使わないのかと質問したところ、サトウキビの殻がべたべたして、ちょうどつなぎの役割をしてくれるので、全て自然由来の廃材を再利用しているとのことでした。
なので、この家具を細かく刻んで自然に放置すると、半年ほどで90%の材料が自然に還るそうです。
materでは、使われなくなったAlderの家具を改修して、それをまたリサイクルして、新たなAlderを制作することも可能だそうです。
廃材を利用して制作した家具を改修して、それをまたリサイクルして新たな家具を制作して、最終的には土に還すことも可能という、とても環境に配慮された家具制作の取り組みをしています。
Alderの素材は見た目も素朴で可愛くて、とても素敵な家具だと思いました。
ここまでは、去年もご紹介させていただいたメーカーの今年の展示内容です。
長くなってしまったので、その他の展示は次回またご紹介します。