北欧古物専

デンマークで椅子張り職人になりました

現場研修(Læreplads)31 春の訪れと革作業

春になって、朝の通勤時間がやっと明るくなってきました。

まだ早朝はマイナス気温の日もあり、そんなときは、こんな風に霜が下りた幻想的な風景の中を運転出来るので、嬉しくなります。

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淡いピンクとブルーの混ざりあった空の色が、本当にキレイです。

今年もそろそろ家庭菜園の準備をしようかと、近くに住んでいる夫のおじいちゃんの家に肥料(馬糞)をもらいに行ってきました。

いただいた馬糞はほとんど匂わなくて、割ってみると、中身は細かく砕いた草のかたまりのようでした。

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おじいちゃんの馬たち。家の裏の広い牧草地で、のびのび育てられています。

今週はティナの工房で、新しい課題に取り組ませてもらいました。

革のミシン縫いです。

 

まずは、古い張地を剥がして、縫い目をほどいて、それぞれのパーツに分けます。

古いパーツを型にして、新しい張地用の革を切り出していくのですが、革はよく伸びるので古い張地は型がくずれていて、もはや原型をとどめていません。

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剥がした後の古い張地。革が伸びていて、元のパーツの型を復元するのが難しいです。

そこで、伸びる前の革のパーツの原型を自分で予想しながら、革を切り出します。

ティナにアドバイスはもらいますが、実際に縫い合わせて、かぶせてみるまでは、これで型が合っているのかどうかは分かりません。

 

しかも、革は一度ミシンで縫い合わせてしまうと針穴の跡が残ってしまうので、布のように縫い目をほどいて何度も縫い直すことが出来ません。

 

縫い目をほどいて、針穴の跡が見えないように2㎜くらい内側を縫い直すことも出来ますが、そうすると型が少し小さくなってしまいます。しかも上手に2㎜内側を縫わないと、古い針穴が見えてしまって、もう一度始めからやり直さないといけなくなります。

 

ただでさえ革は高額で緊張するのに、あいまいな元のパーツから何となく合いそうな形を切り出して、ピッタリ合う形にミシンで縫い合わせないといけないなんて…

難易度高めです。



慎重に作業を進めましたが、結局失敗して、何度か新しく革のパーツの切り出しからやり直すことになりました。

ストレス満載でものすごく疲れましたが、何とか3つの小さなパーツの革張り作業を終えました。

 

大変でしたが、また少し成長できて嬉しいです。

次回の学校での授業、本コース3では革のミシン縫いをしなくてはいけないので、その前に少し経験できて良かったです。

 

革作業が終わってほっとして、あくる日工房に出勤すると、真っ赤なナナ・ディッツェルのトリニダードチェアが置いてありました。

 

おお!と思ってひとしきり観察した後、自分の作業台へと歩こうとすると、真っ赤なトリニダードチェアに気を引かれて気が付かなったのですが、こっそりフィン・ユールの椅子が置いてありました。

 

おおおお!遂に来たか!しかもチーフテンチェア!ローズウッド!

 

と、朝から一人で大興奮してしまいました。

とうとうフィン・ユールの椅子を張り替えるときが来たか、と鼻息荒くしていたのですが、アーム部分の剥がれてしまった革を張り直すだけの修理でした。

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剥がれてしまったアームの先の裏側の革張り。

薄い鉄板に革を接着剤で貼り付ける方法は、椅子張り的にはいかがなものかと思ってしまいますが、デザインを優先するとこうなってしまうのだろうな、と納得しました。

 

建築家でありながら、有機的で彫刻のような美しい椅子をデザインしたフィン・ユール。

 

一方、家具職人を経てデザイナーになり、家具の作りやすさや張りやすさなど、細かいところまで丁寧に配慮してデザインしたウェグナー。

同年代に活躍した同じデンマークの家具デザイナーでも、その性質は全く違うものなのだなぁと、椅子張りの作業を通じて、改めて感じました。