北欧古物専

デンマークで椅子張り職人の学校に通っています

現場研修(Læreplads)22 下地の修理

朝の通勤時間が、とうとう真っ暗な季節になりました。

明るい朝の運転は、春までお預けです。

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朝工房に着くと、やっと東の空が明るくなってきますが、日の出はまだです。

今週は、少し珍しい下地の修理をいくつか行いました。

 

一つ目は、古いソファの下地です。

張地は破れていなかったので、見た目には分かりませんでしたが、古い下地材を剥がしてみると、土台となる麻布と麻草に大きな穴が開いてしまっています。

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真ん中に大きな穴が…

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ソファは長らく倉庫にしまってあったそうなので、上に何か重い物を載せてしまっていたのではないか、との推測です。

あちゃ~、これはひどいな~。

 

と困った様子のティナ。

こんなときに役立つのが、ベテラン職人へニング(86歳)です。

 

今週も、元気にウェグナーのソファGE236を修理しているへニングに、ティナが助けを求めます。

 

私がいつか自分で修理して使いたいと思っている憧れのソファGE236を、なぜがへニングがしょっちゅうティナの工房で張替ているんです。

いつもいいな~と思いながら、こっそり修理方法を観察しています。

 

へニングも、こりゃひどいな~と言いながらも、テキパキ修理方法を教えてくれます。

 

二人の意見を聞きながら、まずは開いてしまっている穴に、麻草を詰め込んで、他の部分と均等な張り具合になるようにします。

「他の部分と均等になるように」の加減が、とても難しいです。

詰め込み過ぎてもダメだし、少な過ぎてもダメです。

硬さが偏らないように、両手で確認しながら、慎重に詰め込みます。

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やっと麻草を詰め込み終わりました。

次に、破れてしまっている麻布の上から新しい布を被せて、麻布と麻草を縫い付けていきます。分厚く詰め込まれた麻草を貫いて、底まで針と麻ひもを通して縫っていくので、なかなかの力作業です。

さらに、麻草の下にあるスプリングや麻テープを避けながら縫わなくてはならないので、そこもまた一苦労です。

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ソファの裏側。麻テープとスプリングでごちゃついた部分を避けながら、狭い場所で針と麻ひもを通していくのが大変です。

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やっと縫い終わりました。

このような伝統工法の修理は普段なかなか無いので、体力的には大変ですが、とてもワクワクします。学校で習った技を使えるのも、嬉しいです。

 

二つ目の下地修理は、一人掛けソファです。

見た目は問題なさそうでしたが、座面を押すと少しきしむ音がします。

よく見ると、底のスプリングが一つ折れてしまっていました。

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スプリングの真ん中あたりが折れています。

スプリングを入れ替えるために、てっぺんのひもをほどいて、新しいスプリングに結び直します。

これもまた、狭い場所で硬く縛られひもをほどいて、また結び直して、と予想以上に大変な作業でした。

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右のスプリングが、入れ替えたスプリングです。なかなかキレイに直せました。

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一番上の段の右から2番目のスプリングが、入れ替えたスプリングです。
見た目には、ほとんど分かりませんが。

下地は、張地を新しく張り替えてしまえば見えなくなりますが、座り心地を左右する大切な部分です。出来るだけ手間をかけずに、でもしっかり直さなくてはなりません。

 

どうすれば一番簡単で効果的に修理出来るのか、いつもティナと頭を悩ませるところですが、椅子張り修理の面白いところでもあります。

 

こういった実践的な方法は学校では習えないので、ティナの工房で修行しながら、少しずつ経験を積んでいきたいと思います。

 

さて、クタクタに疲れた下地修理ですが、明日から1週間の秋休みなので、今日は元気いっぱいです。

やりたいことも行きたいところもたくさんあるので、のんびりしつつも、楽しい秋休みにしようと思います。