北欧古物専

デンマークで椅子張り職人になりました

現場研修(Læreplads)39 100年前から変わらぬ伝統技術

工房の横の牧草地に、今年も牛たちがやって来ました。

去年の牛とは違う種類で、毛が長く、角が生えています。

今年の牛は、前髪が長くて少し不良っぽいところが可愛いです。

こちらが去年の牛たち。顔が白くて、こちらも可愛いです。

ティナに、去年の牛はどこへ行ったのか聞いてみると…

肉牛だから、どこかの冷蔵庫かな?

との返答でした。

 

この可愛い牛たちの命をいただいているのだなと思うと、お肉を大切に食べようという気持ちになりました。

 

今週は、ティナの工房でとても古いソファの張替えに取り掛かりました。

張地をはがした後のソファ。下地張りがしっかりしています。

ベテラン職人のヘニング(87歳)によると、このソファは1920年代の物だそうで、なんと100年前のソファです。

アンティークソファの張替えが出来るなんて、とても嬉しいです。

 

少しずつ下地をはがしていくと、学校で習った通りの伝統工法の張り方で、ワクワクが止まりません。

細かく削った木、干し草、動物の毛、コットン、麻布など、自然素材だけで出来ています。

学校で習う伝統工法は、100年前から変わらぬ技術なのだと分かり、感動しました。

自然素材の下には、スプリングがあります。

スプリングのヒモの縛り方が学校で習った方法と少し違いますが、これは本当にいろいろな縛り方があるそうなので、椅子ごとに少しずつ違っています。

ヒモと釘が新しいので、この部分は以前にどこかで修理されたのだと思います。

左がヒモを固定していた釘で、右がその他の釘です。

写真右側の釘はとても古そうなので、きっと100年前の釘だと思います。

この古い釘は、よく見ると大きさや形が一つ一つ異なっています。

もしかしたら手作りの釘なのではないかと思うと、とても貴重な物に見えてきます。

古い釘たちは、一つ一つ違う大きさと形です。

釘を抜いた後の木枠は、穴だらけです。

スプリングと麻テープも、全て取り外しました。

すっかり夢中で作業していましたが、このソファは伝統工法では修復せず、ウレタンを使っての張替えになります。

底にゴムのテープを張り、その上に厚いウレタンを載せて、元の形と同じになるように張り替えます。。

学校のクラスメイトたちと話していると、コペンハーゲンなどの大きな都市では、伝統工法での修復がほとんどという椅子張り工房もあるようですが、ティナの工房のある地域では、伝統工法の修復だと費用が高くなり過ぎてしまうので、ウレタンで張替えるお客さんが多いのが現状です。

 

100年前のソファを伝統工法で張替え出来ないのは残念ですが、捨てられてしまうよりも、こうして張替えてまた使ってもらえることが、大切だと思います。

現代風に形を少し変えながらも、これからまた長く大切に使ってもらえるように、丁寧に作業しようと思います。