北欧古物専

デンマークで椅子張り職人の学校に通っています

現場研修(Læreplads)51  いつもの工房とプラムの実

4週間の夏休みをたっぷり日本で満喫して、先週からまたティナの工房で働いています。

それにしても、久しぶりの日本の夏の暑さにはビックリしました。

本当に暑かった~!

気温20℃前後のデンマークへ戻ってきて、体がホッとしています。

 

久しぶりにティナの工房へ行くと、工房の横にいる牛さんにキョトンと見つめられて、癒されました。

毎年春になると違う牛たちがやって来るのですが、今年の牛は、毛が長いけど去年のような不良っぽさがなくて、素朴で可愛いです。

 

去年の牛の記事はこちらです。

https://hokuohkomonosen.hatenablog.com/entry/2022/06/19/051521

今年の牛も可愛いです。

 

夏休み明けの仕事は、ウェグナーのソファの張替えから始まりました。

木部が結構汚れていたので、石鹸で洗って、クリームを塗って、しっかり木部のメンテナンスもしました。

このソファ、実は私がいつか欲しいと思っているソファなので、ティナの工房で修理工程を体験できるのは、とても良い勉強になります。

ボロボロの安いウェグナーのソファを見つけたら、自分で修理して使おうと思っています。

木部メンテナンスを終えたウェグナーのソファ

それ以外には、椅子の修理に必要な座面の板を、自分で型を作って、電動ノコギリで切り出しました。

いつもはティナの旦那さんが板を切ってくれるのですが、ティナに自分でやってみる?と聞かれて挑戦してみました。

電動ノコギリは学校で一度使ったことがあるだけでしたが、意外と上手に切れました。

座面のクッションを元に、プラスチックシートで型を作りました。

なかなか上手に切れました。

 

ところで、ティナの工房の横には立派なプラムの木があるのですが、この夏休み中に、たわわに実がなり過ぎて、なんと木の枝が折れてしまったそうです。

枝が折れてしまったプラムの木

実がなりすぎて、重みで垂れ下がっている枝たち

プラムの実を家族で25㎏収穫したけど、まだまだ実がなっていて、とても食べきれないから、欲しいだけ持っていって!

とティナに言われ、夏休み明けは、プラム取り放題の日々でした。

木で熟した無農薬のプラムは、とても美味しいです。

ティナにいただいたプラム

我が家でも毎日せっせと食べているのですが、とても食べきれないので、友人に譲ったりもしました。

本当にたくさんあるので、料理にも使ってみたら、予想以上にとても美味しい煮込み料理が出来て、新発見でした!

お肉の上の細い薄切りの黄色いものがプラムです。

今週末は我が家にゲストが来るので、プラムケーキにも挑戦する予定です。

 

楽しい楽しい日本での夏休みが終わって、いつもの穏やかなデンマークの日常へ戻ってきました。

来月は、いよいよ学校での最後の授業、本コース5が始まります。

卒業試験に向けて、最後の授業もがんばります。

3 days of design

気持ちの良い青空のコペンハーゲン

先日、コペンハーゲンで開催された3days og design というインテリアのイベントへ行ってきました!

https://www.3daysofdesign.dk/

 

今年は開催10周年という節目の年でしたが、私は初めて参加してきました。

3days og designは、大きな一つの会場で行われる展示会ではなく、コペンハーゲンの街中のあらゆる場所で、3日間だけさまざまなメーカーやデザイナーがインテリアの展示会を行うイベントで、誰でも自由に見学することができます。

 

今年は約300もの展示が行われ、たくさんの人で賑わっていました。

会期中は、それぞれのメーカーが工夫を凝らした展示以外にも、たくさんのイベントを開催しています。

同じ時間帯にたくさんのイベントが開催されるので、これは参加したい!というイベントにピンポイントで参加することになります。

イベント情報や地図を掲載したアプリが、イベント開催期間の数週間前からダウンロード出来るようになるので、参加される場合は、是非アプリをダウンロードすることをおススメします。

それでは、イベントの様子をお伝えします。

 

街中に大きく掲げられた3 days of designの広告

3days of designの展示会場にはこの黄色い風船が掲げられていて、目印になっています。
風船を目にしたら、是非中をのぞいてみて下さい。

展示会場が多すぎてとても全部は回れませんでしたが、私が見学した会場の一部をご紹介します。

 

【PP Møbler】

https://pp.dk/

 

デンマーク家具デザインの巨匠ハンス・ウェグナーのデザインした椅子を数多く取り扱っているデンマークの家具メーカーです。

 

今年の3daysofdesignに初めてのフラッグシップショップをオープンするということで、見学してきました。

世界的に有名なメーカーですが、なんと今までショールームを持っていなかったとのことで、驚きました。

ビールで有名なカールスバーグの元工場跡地という、趣のあるとても素敵な場所にありました。

シンプルな入口は、素材や色使いがキレイです。

中に入ると、名作が勢ぞろいです。

私の大好きな張地メーカーKjellerup Væveriとのコラボレーション展示

色使いが可愛いすぎます

家具職人さんの実演も見ることができました

こちらは椅子張り職人の実演

この椅子張り職人さん、クラスは違いますが私と同じ学校の生徒で、PPmøblerの研修生です。

 

フラッグシップストアに飾られていたウェグナーの椅子のミニチュア

このミニチュア椅子、実は日本人の方が趣味で作っているんだそうです。

その名も TT Møbler。

https://www.ttmobler.jp/

 

それにしても、精度がめちゃくちゃ高くて驚きました!

PP Møblerの社長さんがTT Møblerのファンで、少しずつ買い集めているんだそうですよ。

 

 

【House of Finn Juhl】

https://finnjuhl.dk/?gad=1&gclid=Cj0KCQjwy9-kBhCHARIsAHpBjHhg9SdDI2_XLd7vZpG60vmCV1IQKoA6eIkD8tzgcbbKIZzOfk3YSdcaAsLEEALw_wcB

 

こちらはその名の通り、フィン・ユールの家具を制作しているメーカーです。

木使いが美しいショールームの入口

数年前まで日本でも制作されていたNo.53。
今は木部のみ日本で制作されているそうです。

エジプシャンチェアのクイっと曲がった先は、どうしても撫でてしまいます。

名作No.45

初めて見たウィスキーチェアは、2022年に復刻が開始されたそうです。

ペリカンチェアはモコモコの張地が張られていました。

我らがジャパンチェア

会場の両サイドは回廊になっていて、フィンユールのスケッチや家具が飾られています。

日本の襖からデザインされたという引き違いの扉と取っ手

ここでも椅子張り職人が実演をしていました。
今学校へ通っていると言うと、少し手縫いを体験させていただけて、感激しました。

 

 

【Fredericia Funiture】

https://fredericia.com/

 

光のたっぷり入る明るいショールームに、ナチュラルな家具がゆったり配置されていて、とても心地良い空間でした。

モーエンセンの名作J39。色使いが新鮮です。

自然素材のほっこりする組み合わせも素敵です。

モーエンセンが自宅で愛用していたソファは、年季が入ってカッコ良すぎです。

最上階のショールームからは、コペンハーゲンの街並みを見渡せます。

椅子張り作業の際にどうしても出てしまう端材を利用した椅子です。
布を縫い合わせるのは、デンマークで仕事を得るのが難しい難民女性たちだそうです。
環境配慮と難民支援をしながら、デザインとしての面白みもあり、とても良いアイディアだと思います。

ショールームを見学していると、イベントでランチをいただくことができました。
とても美味しいベジタリアン料理でした。

夜はショールームで、カクテルパーティーがありました。
招待客のみのイベントでしたが、テラスは人で溢れかえっていました。

 

 

【mater】

https://materdesign.com/

 

サスティナブルな製品作りをしているデンマークの家具メーカーです。

コーヒー豆や乳製品のカートンなど、廃材を加工した材料を使って、環境問題に取り組んでいます。

廃材を使って開発された材料は、色も素材感もとてもオシャレで驚きました。

新たな製品を作りながら環境問題とどう向き合っていくのか、これからのものづくりにおいて、とても大切なテーマだと思います。

コペンハーゲン中心部にある古い教会の中で開催された、とても素敵な展示場でした。

materが扱う廃材の展示

開発中の材料たち。色も素材感も、本当に素敵です。

キレイな色合いのこちらの椅子は、モーエンセンのデザインです。

こちらはナナディッツェルデザインのアウトドアチェア。
緑の色がトレードマークのビール会社、カールスバーグの廃材が利用されています。

展示場の外で、軽食とドリンクをいただきました。

芝生に座りながらの談笑は、とても心地よかったです。

デンマークで暮らして、家具に関わる仕事をしていても、なかなかこんな風にたくさんの家具を一同に見られることはないので、とても貴重な機会となりました。

とても良いお天気の中、たくさんの出会いにも恵まれ、本当に充実した3日間でした。

こんな素敵なイベントに誘っていただいた友人に、感謝感謝です。

 

さてティナの工房は、来週末から4週間の夏休みです。

私は、5年半ぶりに日本に一時帰国することになりました。

久しぶりの日本で、家族や友人と美味しいごはんを食べられるのが、今から楽しみで仕方ありません。

みなさんも、どうぞ素敵な夏をお過ごしください。

5月の連休と地元の観光スポット

デンマークの祝日はキリスト教に関するものが多いのですが、今年の5月は3回の週末が3〜4連休になるという連休続きの1か月でした。

しかも週末ごとに良いお天気に恵まれたので、ここぞとばかりに近くの観光スポットを満喫して来ました。

 

観光ガイドに載っているような有名地ではなく、地元の人たちで緩やかに賑わっているような場所です。

もし機会があれば、ぜひ訪れてみて下さい。

 

【Bramslev bakker(バガムスレウ バッカー)】

http://mariagerfjordguiden.dk/da-dk/vandring/vandrestier/bramslev-bakker

 

私の住む街はフィヨルド沿いの小さな街なのですが、その同じフィヨルド沿いにある自然の美しい丘です。

駐車場に車を停めると、すぐにこの景色です。

ゆるやかな丘を下ると、桟橋に着きます。

桟橋からは、フィヨルドを渡る遊覧船の乗降も可能です。

ちょうど遊覧船がやって来ました。

この日はとても気持ちの良いお天気で、ビーチや芝生で日光浴を楽しむ人がたくさんいました。(と言っても、混みあう程の人数ではありませんが。)

 

フィヨルドはまだ水が冷たいのですが、海水浴を楽しむ人や、カヌー、カヤック、ヨット、スピードボードなどの水上スポーツを楽しんでいる人もいました。

とても気持ちよさそうなヨット

ベンチもあるので、ピクニックにも最適です。

丘をぐるっと回れる4kmのハイキングコースやキャンプ場もあるので、のんびり自然を楽しむのにも良いですね。

https://www.dk-camp.dk/en/campsites/bramslev-bakker-camping

 

 

【Bunkermuseum Hanstholm(バンカーミュージアム ハンストホルム)】

https://bunkermuseumhanstholm.dk/en/

 

第二次世界大戦中、ドイツ軍の占領下にあったデンマークのユトランド半島西海岸では、ドイツ軍がイギリス軍に対しての防護拠点や攻撃拠点として、たくさんのバンカーを建設しました。

バンカーとは、コンクリートの地下基地のようなもので、軍人がそこで生活をしたり、武器の準備をしたり、大砲を備えたりと、さまざまな用途で建設されました。

私の住むユトランド半島には、今も大小たくさんのバンカーが残されています。

 

Hanstholmでは、大きなバンカーの1つを博物館として再現しています。

その他にも、博物館周辺には約400のバンカーが残っていて、中に入ることも出来ます。

博物館の入口。
古いバンカーの景観に配慮してか、景色に馴染んで目立たないデザインになっています。

入口から入ったすぐの建物は新しい建物で、資料館のようになっています。

ドイツ軍の武器がたくさん展示されています。

この新しい建物から通路を通って、博物館として再現された本物のバンカーの中へ入っていくことができます。

バンカーの中の軍人の生活空間の地下通路。当時の様子が再現されています。

軍人の生活部屋。大砲以外は全て地下に隠されているので、窓がありません。

バンカー内の表記は、全てドイツ語です。

大砲用の砲弾も展示されていました。

大砲が載せてあった土台となるコンクリート

中央の丘のようなコンクリートの上に、巨大な大砲が設置されていたそうです。
今は大砲は撤去されています。

ミュージアムの屋外では、当時のコンクリートの部分だけが残されたたくさんのバンカー跡地を散策することも出来ます。

こちらはミュージアムと同じサイズの巨大なバンカー跡地。
中央の丸く盛り上がったコンクリートの上に大砲があったそうです。

こちらは小規模なバンカー跡地

明るい日中でも、バンカーの中は本当に真っ暗闇でした。

スマホの明かりを頼りに中を散策しましたが、肝試しみたいでとても怖かったです。

バンカー内部で屋外からの光を見つけると、とてもホッとしました。

こちらは、さらに小さなバンカー跡地の入口

博物館の敷地内の屋外には、当時バンカー間の物資の輸送や移動に使われていた鉄道も残されています。

緑に覆われた敷地内を走る小さな線路

夏季には、線路の上を小さなトロッコ列車が運行していて、敷地内をグルっと一周することができます。

日本とは違う第二次世界大戦の一面を見ることができて、とても興味深かったです。

本物の戦争に使われたバンカーという建物の跡地でしたが、お天気が良かったことや、美しい新緑の季節だったこもあり、私は「ラピュタみたいだな」とか、「スタンドバイミーごっこやりたいな」とか思ってしまいました。

アトラクションではなく本物だからこそ、当時の緊張感と現在の自然の中に朽ちていく平和な様子とのギャップに、なんだか感慨深いものがありました。

 

 

【Gammel Estrup(ガメル エストゴップ)】

https://gammelestrup.dk/en/

 

Gammel Estrupは、16世紀に建てられた貴族のお城です。

おとぎ話に出てきそうなお城

お城の隣には、噴水のある庭園もあります。

冷蔵庫が無かった時代の氷の保管庫。入口は屋根にある小さなドアのみです。

お天気の良い日は、お城の周りを散策するだけでも、のどかでとても気持ち良いです。

お城の内部は博物館になっていて、見学することが出来ます。

お城の周りはお堀で囲われていて、入口はこの橋のみです。

キッチンでは実演で、当時の薪のコンロを使ってお湯を沸かしたり、ケーキを焼いたりしていました。奥がカフェになっていて、コーヒーやケーキをいただけます。

一番豪華な大広間

上階の主人の仕事部屋は、光がたくさん入って広々していて、気持ちよく仕事ができそうな雰囲気でした。

こんな素敵な場所で机に向かって手紙を書いていたのでしょうか。うらやましいです。

カーテンとの色合いがとても素敵なこちらの壁紙は、よく見ると模様が全て手描きでした!

丸い小さな部屋は、壁一面が本棚で囲まれています。ハリーポッターに出てきそうです。

今回は、地元の小さな観光スポットを紹介してみました。

デンマークには、まだまだ私も知らない素敵な場所が本当にたくさんあります。

郊外の小さな観光地巡りは、コペンハーゲンのような大都市にはない風情があります。

デンマークののんびりとした素朴な雰囲気を楽しみたい方にお勧めです。

現場研修(Læreplads)50 張地メーカー

ブログの更新が遅れてしまいました。

平日の仕事終わりや週末の時間を使って取り組まないといけないことが、たまたまたくさん重なってしまって、忙しくしておりました。

やっと落ち着いたので、ブログを再開します。

 

5月になると気温が安定して暖かくなってきたデンマークでは、菜の花畑が満開です。

少し郊外に出ると、そこら中で一面まっ黄色の菜の花畑を見ることが出来ます。

通勤路にある菜の花畑も満開です

 

ティナの工房では、いつものように忙しくしています。

最近は少しずつ、ティナに質問しなくても、自分の今までの経験を使って一人で椅子張りを完成させることが出来るようになってきました。

 

同じような椅子の張替えでも、椅子の状態、張地の種類、お客さんの要望によって、毎回修理の仕方を変えていかなくてはなりません。

そこが難しいところでもあり、面白いところでもあります。

 

経験と技術の蓄積、修理の仕方や素材に関する知識、その都度最適な修理方法を考え出す創造力と工夫が必要になります。

 

ティナを見ていて本当にすごいなと思うのは、それらのことを当たり前のようにサラッとこなして、いつも様々な創意工夫で椅子を修理していくことです。

そして仕上げの張りについては、少しの歪みや不均一、シワも見逃さず、可能な限り美しい仕上げにこだわります。

そして、作業はとても速いです。

 

師匠にはまだまだ到底及びませんが、卒業試験までの半年間、尊敬するティナの元で少しずつ腕を磨きたいと思います。



さて、今日はティナの工房で使っている椅子の張地メーカーをご紹介します。

私は、日本の家具メーカーで働いた経験があるのですが、その会社ではデンマークの張地を使っていました。

以前このブログでもご紹介した Kjellerup Væveri と Kvadratです。

 

【Kjellerup Væveri】

Kjellerup Væveriは、フィン・ユールやハンス・ウェグナーと一緒に同時代から活躍されているテキスタイルデザイナーのHanne Vedelさんの張地を扱っていることで有名です。

https://kjellerup-vaeveri.dk/

https://www.hannevedeldesign.com/

 

とてもキレイな色使いで、ウールを多く使用した高品質な張地で、私も大ファンです。

10年前から自宅で愛用しているKjellerup Væveriの張地で作ったクッションカバーは、今も色褪せず傷みもなく、キレイな状態を保っています。

 

Hanne Vedelさんとは、幸運なことに、数年前友人の紹介で工房を訪ねて、実際にお話したことがあります。

エネルギッシュで自然体で、本当に素敵な方でした。

日本で働いていた頃から彼女のファンだったので、お会い出来たときは、とても嬉しかったです。



【Kvadrat】

Kvadratは、ナナ・ディッツェルのデザインしたHallingdalの張地が有名です。

デンマークのメーカーですが、世界的に展開しているインターナショナルな会社です。

https://www.kvadrat.dk/ja

 

東京にショールームがあって、私も訪問したことがあります。素敵な張地がたくさんあって、とてもワクワクしました。

デンマーク本社は、私の家から車で1時間半くらいの距離にあるのですが、私はまだ訪問したことがありません。

去年、ティナが新作説明会に招待されて、私も連れて行きたかったらしいのですが、コロナで各社一名のみの参加という条件だったので、私は工房でお留守番でした。

次回は、一緒に行けると良いなと思います。

 

Kjellerup Væveri と Kvadratはティナの工房でも取り扱っていますが、私は椅子張りで扱ったことはほとんどありません。

どちらも高級品で、椅子張りの値段がどうしても跳ね上がってしまうため、なかなかお客さんには選ばれないようです。

 

【nevotex】

ティナの工房で一番扱いが多いのは、nevotexの張地だと思います。

https://nevotex.com/home

 

こちらはスウェーデンのメーカーで、北欧の国を中心に展開しているようです。

値段が手頃で品質も良く、シンプルなデザインでたくさんの色が選べるところが、人気の秘訣だと思います。

私が卒業試験で使う予定の張地も、このnevotexの張地です。

 

値段が手頃と言っても、ティナの工房で扱っている張地はどれも基本的には高額です。

一番安い価格帯でも、1mで約500クローナ(約1万円)で、高額な張地だと1200クローナ(約24000円)かそれ以上の価格になります。

 

なので、張地を切るときは、私は毎回とても緊張します。

 

【Danish Art Weaving】

それ以外にも、Danish Art Weavingの張地も扱っています。

こちらは名前の通りデンマークの会社です。

https://danishartweaving.com/

 

環境に配慮した自然素材、ウール、コットン、麻などの材料を中心に扱っているようです。

デンマークで昔から使われているようなシンプルなデザインが多い印象です。

ウールを使った厚めの張地は、フワフワで触り心地が良く、丈夫な上に張りの作業もしやすいので、とても優秀な張地です。

 

【Gabriel】

Gabrielもデンマークの会社です。

https://www.gabriel.dk/en/?frontpage

 

ヨーロッパだけではなく、アジアにも展開していて、中国、タイ、シンガポール、フィリピンにもショールームがあるようです。

 

張地は、Danish Art Weavingと同じように、デンマークらしいシンプルなデザインで、ウールの高品質な張地が多いように思います。

 

【Bomholtz Larsen】

こちらもデンマークのメーカーですが、ホームページはデンマーク語のみなので、デンマーク国内向けに販売しているようです。

http://bomholtz-larsen.dk/

 

デンマークの1950年代頃の家具はレトロ家具と呼ばれているのですが、その時代の家具にとてもよく合いそうなレトロな雰囲気の張地が多いです。

 

張地以外にも、椅子張りに必要な様々な材料や道具を販売しています。

ティナの工房では、張地よりもそれ以外の材料を注文することが多いように思います。

 

【Designers Guild】

このメーカーは、デザイナーの色鮮やかで個性的な張地が特徴的です。

https://www.designersguild.com/dk/l0

 

普通の張地では満足出来ず、インパクトのあるデザインを求める人向けの張地です。

椅子の張地以外にも、壁紙やカーテンなども扱っています。

レストランやホテルなど、非日常的な空間をドラマチックに演出するのに、とても良いと思います。

こちらは、イギリスの会社のようです。

ティナの工房にもサンプルセットがいくつかあるのですが、私はまだ注文されるのを見たことがありません。




普段は忙しく仕事をしていて、じっくり張地の勉強を出来ていないのですが、少しずつ時間を作って学んでいきたいと思います。

現場研修(Læreplads)49 鋲の種類とイースター休暇

椅子張りでは、鋲を打って張地を仕上げる場合がありますが、今回は少し変わった鋲の種類をご紹介します。

 

一般的には、写真のような丸いシンプルな鋲が一番多く使われています。

私は、まだこのタイプの鋲しか打ったことがありませんが、シンプルなデザインでも、鋲打ちはとても難しいです。

一般的な丸い鋲

次は、もう少し凝ったデザインの鋲です。

見本帳で見たことはあったのですが、実際に使われているのを見ると、想像以上に存在感があって、なかなかデコラティブな仕上がりになります。

なぐり加工のような凹凸がある鋲

花のようなデザインの鋲

そして次は、デザインはシンプルでも少し変わったフェイク鋲です。

こんなに密集して鋲を打つなんて、大変だなぁと思っていたら…

キレイに隙間なく打ち込まれた鋲のように見えますが…

鋲を外してみると、本物の鋲は5個に1個のみで、あとの鋲は鎖のように繋がったフェイク鋲でした。

薄い鉄板のような素材で、自由に折り曲げることが出来ます。

なるほど、これだけたくさん鋲を打つのは大変だから、こんなフェイクの鋲もあるのか!と感心してしまいました。

 

鋲にも様々な種類があって、とても興味深いです。

まだまだ苦手な鋲打ちですが、少しでも速く美しくに打てるように、がんばります。

 

 

さて、ティナの工房では、先週の土曜日からイースター休暇が始まりました。

イースター休暇に入ると同時に、久しぶりの快晴が続いていて、とても嬉しいです。

冬の間ずっと放ったらかしだった自宅の庭のお手入れを、やっと始めました。

 

まずは、家庭菜園に必要なたい肥を、夫のおじいちゃんの家からいただいてきました。

おじいちゃんの家の隣で、のびのび育てられている馬たち。
この子たちの馬糞を、肥料にします。

庭の草むしりをしていると、去年ティナの庭からいただいてきたRamsløg(ガムスロイ)が、ちゃんと芽を出してくれていました。

ニンニクのような香りのこの美味しい葉っぱを、今年はどうやっていただこうかと考え中です。

Ramsløgがちゃんと育つか心配だったので、芽が出てくれて良かったです。

家庭菜園の準備、芝生の手入れ、草むしり、テラスの苔の除去と掃き掃除など、小さな庭ですが、やることは意外とたくさんありました。

久しぶりの太陽と青空の下で体を動かして、とても気持ち良かったです。

キレイになったテラスで、今年初めてのコーヒータイム。
久しぶりの太陽がとても気持ち良かったです。

このまま良いお天気が続きますように。

イースター休暇中にしっかり充電して、来週からは、またティナの工房で学びの日々です。

現場研修(Læreplads)48 ゴムバンドの使い方とモースゴー博物館

3月に入ってやっと明るくなってきたと思った矢先、今度は雪と吹雪が1、2週間ほど続き、なんと冬に逆戻りしてしまいました。

朝の工房。キレイなんですけどね…春はどこへ…

みんな春の雪にがっかりしていたところですが、最近また暖かさを取り戻してきたので、次こそ春の陽気が続きますように、と願うばかりです。

 

 

さて、今週は少し面白いゴムバンドの使い方をしている椅子があったので、ご紹介します。

ティナと一緒に、こんな使い方は初めて見た!と、盛り上がりました。

本当に、椅子の張り方は千差万別です。

おそらく1950年代に張られた椅子。中のウレタンは粉々になっていました。

丁寧に剥がしたウレタンの下は、ゴムバンドで椅子のフォームが形作られていました。

こんな風に、ゴムバンドだけで椅子のフォームを作っているのも、ゴムに切れ目を入れて、割いて使っているのも、全く珍しい使い方です。

全部ゴムを張り直してしまうと、この絶妙なカーブを再現するのがとても難しいので、傷んでいるアーム部分のゴムだけを張り直して、残りは麻テープで補強することにしました。

補強後のゴムバンド。

ゴムバンドにもいろいろな使い方があるものだなぁと感心していると、もう1つ変わった使い方をした椅子がありました。

こちらは、椅子の座面の下地のゴムバンドです。

通常は、椅子の枠と平行に張ることが多いゴムバンドですが、こんな張り方があるとは驚きです。

このゴムバンドは、もうバキバキに硬くなってしまっているので、全て張替えます。

張り替えるときは、平行に張り直す予定です。

ゴムバンドは、一般的にはこんな風に平行に張ってあります。

椅子の張り方は無限大です。

私も頭を柔らかくして、いろいろな張り方に挑戦してみたいと思います。

 

 

ところで、先週末は久しぶりに少し遠出をして、モースゴー先史博物館 Moesgaad Museunに行ってきました。

https://www.moesgaardmuseum.dk/en/

建物は、地面の傾斜に合わせた屋根勾配で、周囲の自然に溶け込むようなデザインになっています。

博物館の入口前です。この日は久しぶりの快晴でした。

屋上は芝生になっていて、お散歩も出来ます。

どこからが屋上の芝生で、どこからが地面の芝生なのか、写真では分からないくらい風景によく馴染んでいます。

この日は久しぶりの太陽光を楽しみながら、キレイな景色も堪能できました。

 

建物のデザインは、デンマークを代表する建築家、ヘニングラ―センです。

 

夏休みに遊びに行ったコペンハーゲンの素敵な美術館Glyptoteket(ニューカールスバーグ美術館)もヘニングラ―センのデザインだったようです。

うーん、素敵な訳ですね。

Glyptoteketの中庭

モースゴー先史博物館では、デンマークの考古学コレクションの展示を元に、石器時代から中世までの歴史を学ぶことができます。

紀元前2500年頃のアクセサリー。今とあまり変わらぬデザインに驚きました。

それ以外にも、世界の民俗学コレクションを元に、世界各地の死者との向き合い方なども学べます。

メキシコの死者の日を紹介する展示。

特にメキシコの死者の日の展示は、とても面白かったです。

たまたま家で、メキシコの死者の日を題材にした「Coco」というピクサーのアニメーション映画を見た後だったので、盛り上がってしまいました。

 

この日は常設展の他にも、ゲルマン民族大移動とフン族の襲来を題材にした特別展があり、そちらも面白かったです。

光や音楽による演出も素敵でした。

アジア系遊牧民のフン族との交渉に金が使われていたということもあり、たくさんの金の展示がありました。

紀元前500年頃の金のベルト飾り

こちらの金で縁どられた巨大なメダルのようなものはスクリーンになっていて、プロジェクターからアニメーションが映し出され、歴史を学べるようになっていました。

とても広い博物館なので、テラスで休憩もしました。

屋上に気持ちの良いテラス席があります。

持参したコーヒーと道中のパンやさんで買ったサクサクのデニッシュパンで休憩しました。

予想以上に充実した展示ばかりで、休憩を入れつつ、結局5時間も滞在してしまいました。

建築やお天気も楽しみつつ、歴史も楽しく学べて、充実した休日となりました。

現場研修(Læreplads)47 家具工房のロゴデザイン

3月になって、朝の通勤時間がやっと明るくなってきました。

今はちょうど日の出のタイミングに出勤しているので、お天気の良い日は、夜明けのブルーとピンクに包まれた静かで美しい景色を楽しめます。

美しい景色が見れた朝は、暗く寒い中を早起きしたご褒美のようで、嬉しくなります。

朝はまだ氷点下の日も多く、そんな日は霜が降りた幻想的な風景も楽しめます。

 

 

学校から戻ると、古い張地を剥がす順番待ちの家具たちが、工房に溢れかえっていました。

修理や張替え作業も行いながら、張地の剥がし作業に追われています。

 

ティナの工房は、特にデザイナー家具を専門に扱っている工房ではありませんが、家具のデザイン大国デンマークだけあって、いろいろな名だたるデンマーククラシック家具メーカーの椅子の張替依頼がやってきます。

 

家具メーカーのロゴを見つけると、嬉しくてついつい写真を撮ってしまうのですが、中には全く知らないデンマークの家具メーカーもたくさんあります。

 

今回は、工房で見つけた家具メーカーのロゴを少しだけご紹介します。

まずは、日本でも有名な家具メーカーをご紹介。

ヤコブセンの家具を多く作っているFritz Hansen

ティナの工房から近いので、工房でもよく見かけるGETAMA

モーエンセンが活躍したFDB

日本でも人気のCarl Hansen & Son

ティナの工房では珍しいFredericia

それ以外にも、今はもうなくなってしまっている昔のデンマーク家具工房のロゴが可愛かったので、ご紹介します。

特徴的なデザインのロゴマーク。1950~60年代の工房、Bramin。

APO Møbler も1950年代の工房のようです。

Søren Hornは1980年代の工房のようです。

たくさんの知らないメーカーのロゴを見ながら、デンマーク家具の黄金期には、本当にたくさんの家具メーカー、工房、職人さんたちがしのぎを削っていたのだろうな、とその時代に思いを馳せてしまいます。

 

それにしても、この時代の家具工房のロゴデザイン、素敵ですね。