北欧古物専

デンマークで椅子張り職人の学校に通っています

初めての現場研修

f:id:Hokuohkomonosen:20200911233213j:plain

夏の終わり、近所のビーチは海水浴を楽しむ人でいっぱいでした

難航している研修先探しですが、やっとほんの少し希望の光が見えてきました。

来週から近くの椅子張り工房で、praktikと呼ばれる短期研修をさせてもらえることになりました。

 

コロナ休校中に一度訪問していた女性の職人さんの工房です。

前回訪問した後にすぐ学校が再開されたため、現場研修の返事がもらえていないままだったので、先週、ダメ元でもう一度訪問してみました。

なんと、今回は前回よりもとても前向きに現場研修のことを考えてくれて、来週から短期研修をさせてもらえることになりました。

これまでに10社以上の工房に連絡をとってきましたが、彼女の工房が一番印象が良く、第一希望だったので、嬉しくて仕方ありません。

 

学校で本コースに進むには、Lærepladsと呼ばれる研修先を見つけて研修の契約を結ぶことが必須条件になっていますが、これがなかなか大変です。

 

Lærepladsになる工房・会社は、自分たちの職場で生徒に椅子張りの技術を教えながら、給料を支払わなくてはなりません。本コースのカリキュラムは、6ヶ月間の現場研修のあと、5週間の実技授業を学校で受けて、その後また6ヶ月間の現場研修に戻るという過程を4年間繰り返します。生徒が学校で授業を受けている間も、Lærepladsは同じように給料を払わなくてはなりません。

 

つまり、半人前の椅子張り職人見習いの生徒に、給料を払いながら現場教育を行い、しかも学校の授業時間中、職場で働いていない間にも給料を支払わないといけないのです。そのため工房側の負担がどうしても大きくなってしまい、今やLærepladsになってくれる工房はかなり少なくなってしまいました。

 

数少ないLærepladsをしている工房には、すでに他の生徒が在籍していて、席が空くのは数年後...という状況に対して、基礎コースには半年ごとに10数名の生徒がやってくるので、圧倒的にLærepladsの数が不足しています。そこには、Lærepladsをかけた生徒同士の椅子取りゲームのような戦いもありますが、幸い私のクラスメイトは、住んでいるエリアがバラバラだったので、みんなで情報交換しあいながら、助け合い、励まし合いながらLærepladsを探していました。

 

半年ごとに10数名の生徒が基礎コースを終了しますが、その中からLærepladsを見つけて本コースに進めるのは、4、5人の生徒だけだそうです。ちなみに、椅子張り職人の本コースを受けられるのは、デンマーク国内でSkive Collegeだけですが、基礎コースだけならコペンハーゲンの学校でも受けることが可能です。つまり合計20数人の基礎コース終了者に対して、Lærepladsになってくれる工房はデンマーク全体で4、5カ所だけなのです。

私は基礎コースが終わって2ヶ月経ってもまだLærepladsを見つけられていない訳ですが、その間にも、新たに基礎コースを始めた20数名の生徒も同時にLærepladsを探しているので、そこには常に競争があるのです。

 

Lærepladsを探していてよく聞かれるのは、以前どこかでpraktik(短期研修)をやったことがあるかどうか、ということです。どの工房も、経験の無い人は雇いたくない訳です。そのためpraktik経験の無い私は、かなり不利な状況です。

 

本来なら基礎コースの授業中にpraktikを受ける期間が設けられていて、私もある工房とpraktikの約束を取り付けていたのですが、コロナの影響でキャンセルされたため、praktik経験が無いまま基礎コースを終了してしまいました。

praktikの約束をしていた工房には何度も連絡を取りましたが、研修を決める責任者の人が変わってしまい、新しい責任者には研修の受け入れ許可をもらうことは出来ませんでした。

 

そこで、まずはpraktikをさせてもらえる工房を探していたのですが、praktikをさせてもらうには、以前どこかでpraktikの経験が無いと断られてしまうのです。デンマークで仕事を探すには、とにかく経験が重視されるようですが、経験を積むにも、その前に経験が必要という、堂々巡りのような状態に陥ってしまいました。

 

なので、praktik経験が全く無くてデンマーク語も下手くそな私の、最初のpraktikを受け入れてくれるこの職人さんには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。しかも、一番行きたかった工房だったので、嬉しさもひとしおです。

 

私のデンマークの椅子張り職人の最初の師匠ティナの元で、来週から精一杯頑張ります。