北欧古物専

デンマークで椅子張り職人の学校に通っています

現場研修(Læreplads)10 先人の工夫

3週間ぶりに工房に戻ると、朝の通勤時間が随分明るくなっていました。

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工房に着くと、もう太陽が昇ってきました!うれしい!

病欠明けの初日はものすごく疲れましたが、何とか体の調子も戻ってきて、今は毎日元気に働いています。

 

先日、古い椅子の座面の張替をしていると、昔の椅子張り職人さんの面白い工夫がありました。

普段は麻の布が使われることが多い部分に、何と新聞紙が使われていたのです。

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干し草の上には、麻布の代わりに新聞紙が。

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干し草を取り除くと、その周りに丁寧に丸められた新聞紙が釘止めされています。

これはどうやって修理したら良いのか分からずティナに相談すると、

こんなの初めて見た!

と、とても嬉しそうに新聞の発行日を探し始めました。

二人がかりで探したものの、なかなか見つかりません。

 

やっと見つけた日付は、1951年2月19日。

70年前の新聞でした。

 

この椅子を張った職人さんも、まさか70年後に日本人の職人見習いに張り直されるなんて、思わなかっただろうな。

と、一人微笑ましい気持ちで椅子の張替作業をしました。

 

ティナと相談して、丸められた新聞紙と干し草は、そのまま使うことにしました。

30年後にこの椅子が張替えられるときには、100年前の新聞紙が使われていて、未来の椅子張り職人さんはきっと驚くだろうなと思うと、それもまた楽しみです。

 

へニングなら、きっとこんな風に新聞紙を使った張り方も知っているに違いない、

とティナが興味津々に聞いてみると、

 

昔は何でも使ってたからね。

 

と言って、全く驚く様子も、懐かしむ様子もなく、ミシンを踏み続けていました。

さすが、86歳のベテラン職人。

新聞紙を使うことくらい、何でもないようです。

 

これからも、どんな先人たちの工夫に出会えるのか、とても楽しみです。