北欧古物専

デンマークで椅子張り職人の学校に通っています

現場研修(Læreplads)33 椅子の張り方は無限大

デンマークでは、サマータイムが始まりました。

時計の針を1時間早めるという、日本では馴染みのない習慣ですが、これにより夕方の時間がとっても明るくなりました。

 

これで、夏に向けて気分は盛り上がってくるところですが、朝はまだまだ氷点下の日が多いです。

日中との気温差が大きいので、深い霧に覆われることもあります。

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濃い霧の朝。景色は幻想的ですが、運転は慎重に。

今週は、うっすら雪の積もった朝もありました。

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少しだけ雪景色の、朝の工房。

気温は寒くても、太陽や青空が見えて、明るい時間が長くなるのは、それだけでとても嬉しくなります。

 

さて今週は、少し変わった椅子の張替がありました。

 

椅子の座面の底に、麻のテープではなく、薄い金属のテープのようなものが、釘で固定されていました。

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椅子の底の金属のテープ。

何故わざわざこんな薄くて細い金属を?これ、オリジナルの仕様じゃないよね?

どんな修理の仕方なんだ?

 

とティナと話しながら、とりあえずこの金属を外してみました。

椅子張り職人歴25年のティナも、見たことが無い仕様だそうです。

 

金属を留めていた釘の跡を見ると、それ以外に何か他の材料が底に張られていた痕跡が無いので、どうやらこれが、元々のオリジナルの仕様のようです。

 

よく見ると、背中の内側にも、同じような金属部材が使われています。

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背面の内側にも、同様の金属部材が使われています。

座面の金属部材を外した下には、コイルクッションがありましたが、このコイルのデザインも、初めて見る形でした。

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座面のコイルクッション。コイルが一つ一つ独立いていないのが、特徴的です。

底面の金属テープだけでコイルクッションを支えるのは不安なので、麻のテープで底面を補強しました。オリジナルの金属部材も、一応元通りに設置しておきました。

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コイルクッションに傷みはなかったので、底面だけ麻テープで補強しました。

なんだか変わった椅子だな…

と思っているとティナが、オランダ製の椅子だからかもしれない、と教えてくれました。

 

なるほど。同じヨーロッパで同じようなデザインの椅子を作っていても、材料や構造は国によって微妙に違うんだなと、勉強になりました。

 

ティナがいつも言うように、椅子の張り方や修理の仕方は、本当に千差万別です。

毎回その椅子ごとに、新しい張り方や構造があって、25年やってても飽きないのが椅子張り職人の良いところ、なのだだそうです。